12月25日、午前零時の領空権
短編ですが、ものすごく色々な要素が詰め込まれています。 少年の過去が哀しく重い…。クリスマス+サンタクロースが幸せモチーフのように描かれるイメージは粉砕されました。 ただ、描かれている重い内容も、一緒に粉砕されるという。読後感がよく、とても痛快です。 とにかく、空中で繰り広げられる熱いバトルに刮目せよ!という内容でもあります。
- 作品更新日:2021/6/1
- 投稿日:2021/7/24
奴隷屋の日常
作品タイトルからわかる通り、主人公は奴隷屋。奴隷を売買するという商売をしている青年シリウス。その相棒ともいえるライファットと共に過ごす日常や、過去の出来事のエピソードが綴られた物語です。 奴隷の売買をする奴なんて、ろくでもないのではと思いきや、彼は善人でも悪人でもないです。 奴隷の生活環境を良くしてこそ商品としての価値は高まり、客ともwinwinという理念で、奴隷を商品として丁寧に扱うし、銃や剣に名前を付けて大切にする。物と人に対するベクトルが同じなのかな?という部分も。 「身内」と呼べる相手以外に対しては、物であっても人であっても、大事にすべきものは大事にするし、いらなくなったら捨てるというクールでドライとも言える部分もあり、こういう性格の主人公であることが、とにかく他に類を見ない気がします。 だからといってどっちつかずという訳でもなく、中庸というわけでもない。掴みどころがあるような、ないような。でも裏表がない、なんとも気持ちの良いキャラクターといった感じで。このシリウスという男を知るためだけでも、読む価値あり。 ライファットとのバディ感あるやり取りも小気味よいです。 日常といっても、事件が皆無なわけではなく、ほんわかするものから手に汗握るような色々なエピソードがあり、その物語ごとにキャラと世界観が深まっていき、気付けば最新話を心待ちにしてしまうという作品です。
- 作品更新日:2021/9/22
- 投稿日:2021/7/24
乱歩のまなざし
タイトルにもあったので、乱歩作品を読んでいないとわからないかもという不安がありましたが、未読でも全く問題なし!という事を、まず。 もしそれを気にして読んでいない方がいらっしゃったら、ご安心下さい。私は少年探偵団のシリーズしか読んでないけど、大丈夫でした。 「私」視点の、「私」の物語。 女子大生の、リアリティある心情と、学生生活、人間関係。 ジャンルはミステリーになっているけど、人間ドラマに感じられました。「私」のドラマ。 文学の話かと思いきや、心理学についての内容が濃密で、読み終えると色々な知見が得られている点も一読をお勧めできる部分ですが、これら一見、難しそうで尻込みしてしまう要素に見えて、それが面白さに転換されているという。 作者の文体、構成、表現が秀逸。馴染のない理論や用語がわかる、すらすらと。 最初は軽く読もうと思って、まず各話の最初の二行、最後の二行だけを見たのですが、その間が読みたくて仕方なくなりまして。 全部読みたい。 この引力をどう表現したらいいのか。 難しそうで、自分に合わないかも?と思われるなら、まず私と同様に最初と最後の二行を読んでみて欲しいです。間違いなく、全文読みたくなります。 「私」のキャラも、准教授の名木橋のキャラも、とても印象と記憶に残る人物像で、各話でいろいろと、心揺さぶられます。最初に人間ドラマと書きましたが、強いてミステリー感を感じたのは名木橋という人物ですね。カッコイイけど、存在が何気に謎めいているというか……。 熱く感想を語れる要素が多いので、この作品レビューを書く人は、自然と長文になる点でも、色々とお察しください。
- 作品更新日:2021/1/28
- 投稿日:2021/8/5
異世界転移していない!? ここは-システムエラー-界らしいです~ちょっとおかしなゲームを攻略しなきゃいけなくなりました~
文面が淡々としていて、主人公の佐藤君も、すっごい小ざっぱりしていて、ゲーム世界の、命の軽さみたいなのと絶妙にマッチして、独特の世界観が構築されている、ちょっと一味違う異世界移転系。 とにかく、佐藤君は死ぬ。 佐藤君に残機的な概念はなく、本人にはどうにもできない理由で、軽くさくさく死んじゃう。チート?何それ?みたいな。 何度死んでも、オートセーブの地点に戻るから、もう一度のリスタートができ、一度体験したことを回避する事に佐藤君は頭を捻りまくるのですが、それに全く悲壮感もなく、恐怖心的なものもなく、なんとも軽い。 だからこそ読める。もしこれが、死の恐怖を超リアルに描き、苦悩しまくる主人公だったら3回目ぐらいのリスタートで読んでる方が挫けそうなんだけど、良くも悪くも、ゲームっぽさ。 「あっ、選択肢を間違えたっぽいやり直そうリセット!」……みたいな事を、ゲームでは皆やった事があると思うのですが、それぐらいのライト感。佐藤君は、ゲーム世界の住人になってる、っていうのがこう言う部分でもわかる。 そして困ったのが、このゲーム、なんかバグってる……? アイテム欄なんて文字化けしてるしで。 こんな波乱万丈な異世界移転系、かつてあっただろうか。 テンプレのようでテンプレ感なし。クリアすれば、元の世界に戻れるのかもわからないけど、暗さはない。 ヒロインのシャロールちゃんが可愛く、途中からラブコメ度が加速していきます。 全体的に台詞シーンが多めで、気軽に楽しめる物語です。 以上、%$#?>//からお伝え……エラーが発生しました。
- 作品更新日:2021/4/30
- 投稿日:2021/8/2
事件簿には白椿を添えて
ジャンルはホラーとなっていますが、ミステリー色が強いです。 霊感要素もあるため、オカルト系ではあるのですが、読者をとにかく怖がらせる系統ではなく、少しゾッとするけど、根っこは推理系のような感じで。 主人公と幼馴染の関係が結構軽めで、ラブコメ感もあり、ホラーは苦手と言う人でも読める内容。二章「神隠し」からやや怖さがアップします。 登場人物が多いけど、それぞれが印象に残る個性を放っているので、混乱する事はなさそうです。これからのエピソードごとに、彼ら一人一人の個性がより発揮される場面も増えていく期待のある作品です。
- 作品更新日:2022/11/13
- 投稿日:2021/7/24
銀の風、竜の瞳。
物語のスタートからドラマチックな展開で、醸し出される空気感がこの世界の説明になっているという、情景描写の妙。 魅力的かつ、深みと個性のある登場人物は、誰一人と脇役ではなく、この世界のそれぞれの主人公であり、退場のたびに心痛みます。だが、戦いに勝敗がある限り、生き残る者と死する者があるのはやむを得ない事でもあり。歯を食いしばって前を進む登場人物と共に、読者もこの世界を歩む事になります。 とにかく、文章力が高く、情景が目の前に浮かぶだけでなく、風の香りや音すらも聞こえて来るかのよう。こんな臨場感のある文章は稀有ではないかと。 戦闘シーンでは、それまで聞こえていたはずの環境音が聞こえなくなり、息をするのも忘れて、その戦いに見入ってしまうほど。 登場人物がほっと息をついたとき、同時に自分の耳に音が戻った時は、身震いをするほどでした。 主人公二人の旅と、軍パートという二本軸で、世界が大きく変動し、同時に、過去にこの世界が構築された出来事の事を、まるで自分が知っていた事を思い出すように想像できていく構成力の高さも素晴らしいです。世界設定を、教えられるのではなく、感じるように理解できます。 重厚かつ力強いこの物語ですが、それは読んでいて緊張するシーンが連続するという事でもあり、完結してからの一気読みより、ぜひ連載中の今の段階から、じっくりと読み進めて行く事をお勧めしたいです。
- 作品更新日:2024/3/3
- 投稿日:2021/7/28
最強の1年1組、理不尽スキル「椅子召喚」で異世界無双する。戦いも生活面も完璧な小学生と冒険しながら、微妙なスキルしか無い担任の私は「気持ち悪っ!」連発しながら子供たちを守り抜きます!
クラス丸ごと異世界移転、しかもそれが小学一年生!異世界で一クラス分の児童を引率する大人はなんとたった一人…!子供ってじっとしてなくない!?という不安はあったけど、子供達が個性的でありながら良い子揃い。しかも賢く、子供らしい発想力と行動力で、ピンチをどんどん切り抜けてくれる。 そして主人公であり、読者のツッコミの代弁者とも言える先生がサバサバしていて、ものすごくリアリスト。考えても仕方ない事は軽く放棄して、単純明快にばっさばっさと苦難を乗り越えていくという。それが軽軽で、暗くなりそうな要素も明るく描かれ、読んでいてとても「楽しい!」と純粋に思えました。 椅子に無限の可能性を持たせた物語は、後にも先にもこの作品以外あり得ないのではないかという奇作でもありますが(木+奇の子だし…?)、イロモノと思うなかれ。合間に含蓄ある言葉が織り込まれたり、人間心理の闇な部分、社会的な問題にも触れていたりして、ただの娯楽作品とは言い切れない要素も濃いです。 旅をしているために生じる、出会った人々との別れ。子供達とのふれあいを微笑ましく見ていた身としては、この別れがかなり切なく悲しい。でもそのそれぞれの別れの必然性と、納得できる決着の付け方があり、読後感が最高に良いです。 一気読みもできるライトな口当たりですが、これは注意点だ…!と思わせるのが、飯テロ要素。どうにもお腹がすくという。夜に読んだらいけないやつです。 モンスターを椅子で倒すと、お弁当やおやつが出るんですよ!それの描写が細かくてですね!みんな美味しそうに食べるの!!
- 作品更新日:2021/4/12
- 投稿日:2021/7/28
Somewhere, Nowhere 〜ここではないどこかへ〜
世界設定は比較的複雑ですが、すんなり違和感なく受け入れる事が出来るわかりやすさで、数話でどのような世界観なのかが理解でき、その下敷きの上で進む物語を純粋に堪能する事ができるので、普段ファンタジーを読まない層でも、とっつきやすいと思います。 何百年も生きる種族であったり、姿を変える種族であったりで、種族ごとの行動パターンや考え方が、普通の人間の経験しかない読者としては、突飛に思えたり、信じられないように思えるものなのですが、彼らのような存在ならそう考えてしまうだろうな、という説得力があり、納得できます。 そのような人間とは違う考え方をもつ登場人物が、とても魅力的で、考えは理解しがたいけど、その気持ちがわかってしまう絶妙な心理が、物語をより深めている感じです。 恋愛要素が強いけれど、主人公の成長物語でもあり、その周囲の心も引っ張られて前に進んでいく様子も、物語の核として追わずにはいられません。 一人の主人公に、多数の愛が殺到する形になりますが、登場人物の人格が完成されているため、暗いドロドロな要素はなく、ただ甘さと切なさだけが胸に残る感じでしょうか。 ファンタジー好き、恋愛もの好きの双方を満足させる内容です。
- 作品更新日:2021/1/21
- 投稿日:2021/7/28
眩惑の瞳 〜美味しいごはんと彼女の好意の因果関係〜
恋愛もの…という事で、甘いシーンがたくさん出てきます。甘すぎて口から砂糖を吐くかと思った回もありましたが、美味しい食べ物と、それにちょっとなぞらえたようなエピソードが絡み合う、ファンタジーなお話です。 食べ物の描写はかなり緻密、ほんのりマメ知識も。美味しい食べ方もさりげなく紹介されているので、飯テロ主力作品といってもいいでしょう。1話に必ずメインの食べ物が出てきますし! ただ前述したとおり、甘いシーン満載のため、何故かお腹はすきません。飯テロ作品でありながら、夜向け…というと語弊がありますけども。 若干重い設定もありますが、その重さは作品の色にはなっておらず、あくまでスパイスと言う感じ。この作者さんの他ファンタジー作品と世界観が通じておりますが、今作では世界設定の深い所までは掘り下げていないので、あくまで食べ物で懐柔されちゃうオコサマ女子が、大の大人を翻弄しまくるお話という感じで読むと良いかもです。
- 作品更新日:2024/1/1
- 投稿日:2021/7/25
オルタナティブ・ダークシード ~金の瞳と魔拯竜の紋章~
精霊がいる剣と魔法の世界…これだけの説明なら、よくあるハイファンタジーですが、この作品の一味も二味も違うところはその緻密な世界観。 特筆すべき部分としては、まるで魔法というものが実在するかのようなのです。そして理論が説明できるほどに詳細に組み上げられていて、呪文も取ってつけたようなものではなく、言霊としてリアルな世界でも作用するのではないかというぐらい、よく出来ています。 そのような独特の魔法観は、魔法はこういうものであるという漠然としたイメージを持つゲーム世代には理解が難しいと思いきや、物語の中で少しずつ抵抗なく知って行く事が出来ます。 そしてこの魔法にまつわる問題が、彼らの前に立ちふさがり。 妖魔との戦い、魔拯竜の謎など、物語の中で目を離せる場所がありません。 街や文化についても、サナトとレラの旅を通して、体験するように理解できてしまって、気付いたらわかっていた、知っていたという状態になっているという。 気付けば没入して、彼らとこの世界を旅しているように感じられる作品です。
- 作品更新日:2022/1/12
- 投稿日:2021/7/22