王女様として生まれたのに、塔に閉じ込められて孤独な日々を送っているという物語の出だしから、「少し暗いファンタジーなのかな」と身構えてしまいましたが、そんなことは一切なく、適度にコミカルな場面が描写されていて、非常に読みやすい作品でした。
お話は女性主人公の一人称視点で紡がれていくのですが、こちらの作品は非常に文章が丁寧に綴られていて、女性主人公である王女様の穏やかで内向的な性格がよく描写されています。
冒頭は悲観的に物を考えてしまうのに対し、ご先祖様である猫によく怒られてしまっていたのですが、お話が進むにつれて自分に自信を持ち始めたのか、どんな相手でも怖気ずに構えようとする姿であったり、魔女として相応しくあろうと頑張る姿など、少しずつ彼女の精神面の成長が伺えるシーンも多く、様々な登場人物と繰り広げられるコメディシーンに癒されながらも成長を見守ることができるようになっていました。
また、最近多い転生系の要素も取り入れられていて、こちらは「転生/転移したのが主人公ではない」という点が、さらにお話にエッセンスを加える要素になっています。
物知らずが故に、異世界の知識を披露するキャラに対して「そういう物なのかな」と納得してしまったり、自分の世界には無いものを純粋に喜んだりと、よくある異世界転生系のヒロインの立場でも見ることが出来て、少し新鮮な感じがありました。
お話の一区切りでは少し意味深な回想のようなシーンもあり、あらすじにもあるように18歳を目前としている主人公と同名のキャラが出てきたりと、物語とどう絡んでくるのか今後が楽しみな作品です。
拙いレビューとなりましたが、日常系の長編物語として個人的に注目したく投稿いたしました。
こちらの作者さんは、今のところ毎日1話ずつ投稿を続けられているようで、セリフと地の文のテンポも良く非常に読みやすいお話ですので、毎日の楽しみのひとつに加えてみてはいかがでしょうか。
登録:2021/8/19 23:40
更新:2021/9/19 01:28