ムルムクス
最終更新:2018/3/28
作品紹介
Murmux -Stories must be done- これからわたしがする話はひとつの物語だ。 それは少年少女が暖かで調和のとれたモラトリアムの楽園から追放され、否応なく無慈悲で不条理な現実と向き合わされることになる痛みを伴う成長譚かもしれないし、捉えどころのない不定形の恐ろしい化け物との命を賭けた戦いに挑むジュブナイルなのかもしれない。あるいは、神の加護を受けた主人公が化物を殺し最後には姫を獲得する王道のドラゴンスレイヤー譚かもしれないし、知らぬ間にひたひたと背後に忍び寄っている恐怖を描いたホラーかもしれない。もしかしたら、謎が謎を呼び最後に探偵が真犯人を指摘するミステリーでもありえるのかもしれない。 それがなんであるかは、あなたが好きに決めればいい。わたしはこの物語を始めると決めたのだから。もう、決めたのだから。人間の言語による伝達のままならなさを、物語が宿命的に背負う欠陥を、わたしは受け入れる。 そもそも、実際に語ってみないことには、これがどういう物語になるのか、わたし自身にさえ分からないのだ。もちろん、これはわたしが実際に体験したことなのだから、わたしはこの物語の筋書きを既に知っている。けれど、同じ出来事も切り取りかたと語りかたによって、まったく違った物語になり得るのだ。わたしはあの出来事をどう語ろうとしているのか。それを、わたしはまだ知らない。 ともあれ、わたしは語ろうと思う。 そして、始められた物語は、必ず終わらせられなければならない。 あなたには、わたしが無事にこれを最後まで語りきることができるように、応援していてほしい。そして、できることなら、どうか最後まで見届けてほしい。どんな物語も、誰か受け取ってくれる人がいなければ、きっと、なんの意味もありはしないのだから。 それでは、物語を始めよう。
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