よくこんなもの抱えて生きているなと思う。別に作品世界=作者の心象風景ではないのだけれど、とはいえ何らかの発露ではあるので。
地獄絵図を書くのは割に容易い。けれど、地獄を地獄として見る心を残したまま地獄を書くのはとても難しい。想像力が足りないか、感性が足りないか、その地獄に心がもたないかして折れる。
よくこんな地獄を書くと思いながら読むけれど、本当にすごいのはその情景ではなく、それを見る登場人物なり作者なりの心の方かもしれない。
その地獄に揺らがないからではなく、揺らぎながらそこに在るから目が離せないのだとは、脱線。
脱線ついでに別作品の話をするのだけど。同作者様に、『僕と千影と時々オバケ』という作品があって、千影という不安定になっていくヒロインがいる。その作品をリアルタイムで追いかけていって終盤まで読んだところで、作者様とあるやり取りをして、「あ、この人千影だ」と思った。垣間見えた精神の揺らぎ方がダブっていたので。そこまで作者様のことを知りはしないのだけど、この人は件の作品を書くべくして書いたのだなという気がした。
恐らく、『黒ノ都』も、この地獄も書くべくして書いている。それを怖いとは思いながら、先を読みたいと思ってしまう。
ファンとしては”最終決戦”だなんて冗談ではないのだけど、それはそれとして、この作品の行き着く先を見てみたい。
(2021/03/07)
「全員に共感できる(わけがない)」
全員に対して「その気持ち分かるよ」と思うんですけど、それを言ったが最後、物凄い冷たい目で見られるか、殴られるか、足蹴にされるか、殺されるかだよなと思って。全員理解とか共感とかそんなものは必要としていない、どころか拒んでいるように見えます。
以前この作者さんに、「苦しんでいるときって、今自分が苦しいことを(時には特定の)誰かに知ってほしい一方で、その苦しみを理解してほしいかと訊かれたらちょっと難色示すところないです? だって、その苦しみは自分のものだから」と言われて、「誰か分かってくれますか」と思いながら作品を書いている私は、ああこの人と私は違う人間なのだなあと思ったのですが、それを思い出しました。
俺の、私の、これを理解されてたまるかよ。
あといつも思うのが、美しいなということで。その暗い昏い感情も衝動も歪みも強く激しく、「ああなんでそんなものが書けるんだ」と思うのに、それでも美しい。
私はこの作者さんのファンなので、多分放っておいても全作読むのですけど、この「ほぼ残酷・暴力描写しかない」物語から目を離せないのはきっと第一に美しいからなのだろうなと、そう思っています。
続き、楽しみにしています。
(2020/09/23)
登録:2021/10/5 16:03
更新:2021/10/5 16:21