ウェブ小説を読むようになってから10か月で700作くらいに触れましたが、長期で連載を追いかけて最新話が出たら比較的すぐ読むという作品は2、3作しかなく、本作がその2、3作の内の一つであることは言うまでもありません。
「地球が壊滅した後で再生して、魔法みたいな『幻想』の力を使えるファンタジー世界になったんだね、分かった」と思い読み始めたら、そんな甘い話ではありませんでした(全くの間違いではありませんが)。是非数話読んで度肝を抜かれていただきたく思います。
「それ」と「それ」が両立するのかというのは本作を読んで何度も思うことです。
その文明の遺産とファンタジーの両立。
その硬派な文体と随所に光る軽妙さの両立。
その尖り過ぎた理性とエンタメの両立。
まるで、あり得ない体勢で空中を飛んでいるのにきれいに着地するのを見ているようで。信じ難く、唖然としてそれを見つめることしかできません。物語もキャラクターの思考も私の理解を超えているというのに、どうしてこうまで読ませられてしまうのでしょうか。
王道ファンタジーなのです。構成も要素も王道を踏んでいる。なのに、決定的に”違う”。非常に特殊な物語です。確かに青春ものであり、青春しているのです。なのに”違う”。私は、半年以上この作品を読み続けているというのに、この”違う”という二文字をそれ以上に説明する術を持ちません。私はこの作品が”違う”ことを愛しているのですが。――それを作家性と片付けてしまうこともきっとできるのでしょうけれど。
薄い刃の上を、それでも確かに渡るような作品。目を離すことができません。
(2020年夏)
感嘆、その一語に尽きます。
練り上げられ、あまりに新鮮かつ魅力的な世界観。そして「僕には書けない」と思わざるを得ない豊かな文章。惹き込まれるストーリー。
既にいくつもの設定が開示されており、それらが分かりやすく記述されているにも関わらず、背後にもまだ膨大な設定、思考があるのだと感じさせられます。
それ故物語がどこに行くか分からないのに安心できます(物語自体にハラハラすることとは別。)
要は信頼できるのです。
ある者は選び取り、ある者は選択を諦め、またある者は惑う。この選択をめぐる物語をどうぞお楽しみください。
登録:2021/10/5 16:27
更新:2021/10/5 16:26