この作品を初めて読んだ時の感想は、「僕」が書いてくれているから、私は今の私が思ったことを書いてよいのだと思う。この作品のどこがすごいとか、そういうのではないことを(言うまでもなく本作はweb小説の中で屈指で好きな作品だし、私は今でも読んだ時の震えを部屋の空気と一緒に思い出すことができる)。
タグに目を遣る。「ノンフィクション(6割)」。――そういえば、私は今姫乃さんに「要するに七割フィクション」とタグをつけた作品を「読んでください」と言って渡している。小説だから嘘のかたまりだけれど、いくらかは私の本当なのだと。
web作家が画面越しに見せる「私」など虚構もいいところだ。丹念に作り上げたそれの一辺を目でなぞって、「あなたのことを知っている」などと言えるものか。何も知りはしないのだ。
――けれど、それでも、どこかあなたの話として読んでしまって。
今のあなたと同じところや馴染みのないところを探して読んでしまって。
それは多分、借りたアルバムの中、親しい相手を見つけて小さく笑うのに似ている。
遠く、この世界のどこか、私の知らないあなたを写した写真。
恐らくこの作品を読むのは5回目くらいだと思うけれど、5回目は印象が変わって、この作品にこう言うのは変かもしれないが――幸せだった。
(2021/09/02)
僕のありもしない青春の傷がえぐれました。あんな経験はしたことは無い筈なのに不思議です。ああ、いいなあと思いつつ、あいたたたと呻きつつ読みました。この作品を読めて良かった。書いてくださってありがとうございました。
追記:
他の方のレビューで「本当に美しい作品」と書いてあってその通りだなと思います。 作者の姫乃只紫さんの作品はどれも透明感があって美しい。そして読めばそのあまりのうまさにゾクリとするんです。僕はこの作品を初めて読んだ時に幸福感で一杯でした。こんな素晴らしい作品に出会えるのかと(その一方ですげー痛くて呻いていましたけど)。実は読んでから大分時間が経っているのですが、この作品にいくつもある美しい情景が脳裏に焼き付いて離れません。
あと、姫乃さんの人物・心情描写って細やかでそして残酷なんです。そして僕はその残酷さも好きなのですが、誰か分かってくれる人がいるかな。
(2019/11/22)
登録:2021/10/5 17:13
更新:2021/10/5 17:12