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カクヨム恋愛短編完結

ブレインダムド

「信頼できない語り手」という小説・映画上の手法があるのですが、私はこの手法で書かれた物語が好きなんです。うまくいっていると、物語にいい意味で”揺れ”ができるというか複層的になるので。 ”私”の思い出はクリアなままなのでしょうか、それとも夫の溶けていく記憶と彼の物語る過去をすくって、やはり幾分美しいものになっているのでしょうか。 本作は「信頼できない語り手」が美しい形で使われた物語だなと思いながら拝読いたしました。「どこまで本当なんだ」と読んでいる方はほんの少しだけ切なく、しかしその思い出の美しさと幸福に”溶ける”、現在進行形でハッピーエンドを迎えている物語。 「不能共」https://kakuyomu.jp/works/1177354054918366188を書かれた作者さんですし、キャッチコピーがあれなので、「どうせ今回も何かあるんだろ」と思いながらフォローしたとツイートをしたら、作者の草食ったさんはそんな、割と普通の恋愛掌編ですと仰っていたんですけど、「どこが普通の恋愛掌編だ」(でも仰ろうとしているところは何となく分かります)。一筋縄でいかない作家さんはいいですね。

5.0
  • 作品更新日:2020/8/23
  • 投稿日:2021/10/5
カクヨムその他短編完結

ケンちゃんと悪くない魔女?

 キャプションの時点で好きです。実は以前(神ひな川がまだ開催されていた時?)に読んでいて、その時の感想は和田島さんと大体一緒でした。  まず小学生目線の物語をきちんと小学生目線の話として書いていることに驚嘆せざるを得ません。かなり難易度の高いことを見事になさっていると思います。決して派手なことが起こる話ではない、どちらかといえばかなり地味な話ですけど、この小学生目線への入り込みがすでに娯楽要素として機能していてそれ自体スリリングです。これはずるい。 “魔女”も絶妙なバランスで。読者には「ああ、本当は魔女ではないのだろうな」と思わせる言動をとりますが、でも全くそのことで失望させないというか、だってこの日少年である彼らにとって彼女は紛れもなく魔女ですし、読み手としても「もしかして、ひょっとして」と思う余地があって、魔法を使わない彼女に魅せられてしまっているんです。それってもう魔法のようで。個人的に今こういうのに滅茶苦茶弱いので、もう胸の辺りが大変なことになっています。  と、いうのを思い出しながら書きました。もう一回読みます…………  改めて読むとカタカナの使い方が上手いですね。子ども言葉にすると普通漢字にするところを平仮名にせざるを得ず読みやすさを損なったりするんですけど、要所要所でカタカナにすることで読みやすいし、小学生男子感が出ています。細かいところですけどすごい。 “ 魔女は、みんなが顔を出して様子をうかがっている大イチョウ木の方をちらりと見て言った。三人があわてて首をひっこめるのが見える”。ありがちな動きですが、動きの描写というよりカメラの動かし方がうまいです。ここでカメラを一旦外に動かすことで動きのない息苦しさみたいなものを感じさせないようにしています。  会話。これだけ長い会話、しかも一方、つまり“魔女”の方がかなり喋るものを捌くのは難しいはずですが、書き手の苦しさを感じさせません。こうやってデティールを挙げるときりがありません。  最後もそのよさをうまく言語化できないんですがいいなあと思いました。もう一回読めてよかったです。読ませてくださりありがとうございました。

5.0
  • 作品更新日:2020/8/30
  • 投稿日:2021/10/5
カクヨムSF短編完結

瑠璃色の髪の乙女

「みひつのこい」を拝読した時にも思ったんですが、冒頭で状況を示すのが本当にお上手で。 書き手の方は分かってくださると思うんですけど、冒頭って焦るじゃないですか。ああ、あれも提示して、これも言ってって、どうやって読者を物語に乗せようか腐心する。読者が想像を働かせて物語に入っていけるだけの情報は示さないといけない。それでややもすると、すごく説明くさくなったり、或いはそれを避けようとした結果、なんだかよく分からなくなる。 でも本作はすごくすんなり読ませた上で、物語の背景とかがしっかり分かるようになっていて。あの、好きなセリフ挙げていいですか。 「さぁ起きて、オーナー。今日も地球がきれいよ」 一回目に読んだ時しばらく固まりました。あまりに見事なので。そりゃ、読む前にキャプションは見ているのでそういう場所の話だということは分かっているんですけど、小説本体の冒頭は、「ああ近未来なんだな」くらいでどこか分からない。でもあのセリフでいきなり”位置関係”を叩き込まれるんですよね。世界がわっと広がる。実際地球見えましたし。このセリフがあるから次の” ここは地球と火星の間にある、小さな燃料スタンド。”という一文がすとんと入ってくるんですよ。それを読んだ途端、地球と火星を入れ込んで宇宙の中の燃料スタンドを捉えた遠景が目の前に広がる……という。見事です。 レビューのひとこと紹介は悩んだんですけど、宇宙の中の柔らかさとロマンで。柔らかさはオーナーとシレーネの関係性であったり、文章が持つ雰囲気の柔らかさであったり。オーナーとシレーネの関係いいなあと思います。別にオーナーの気持ちが直截に語られるわけではないけれど、接し方から十分心情が見える気がします。お腹いっぱいです。 ロマンの部分はやはり舞台設定であったりシレーネの設定から。いや、もうこの設定の段階でそりゃもえますよ。あと、髪、ですよね。 事程左様に感嘆しながら拝読しました。

5.0
  • 作品更新日:2020/1/24
  • 投稿日:2021/10/5
カクヨム青春・ヒューマンドラマ完結非公開

シャグシャグ

雑多な稼業をする龍之介とカーマーン、そしてダークウェブに名を馳せるシャグシャグという2人組の話。最初、特に第1話よく分からないなと思いながら読んだんです。ラブホ部屋を掃除していると思われるのに周囲の描写がほとんどなく、ティッシュしか出てこなかったり、龍之介の身体にはどうも秘密があるようだったり、加えて龍之介とカーマーンの外見描写はほとんど無かったり。でもそのよく分からなさは本作の場合長所だと思いました。「草食アングラ森小説賞」の講評を読んでからこれを書いているのですが、私は龍之介の正体をミスリードしているのはアリだと思っています。よく分からなかったり、思っていたのと違うのはこの題材に付きまとう性質なのです。アンダーグラウンドは(少なくとも私のようなパンピーにとっては)分からないものなのですから。 登場人物は必ずしも肯定できる人物ではありません。特に龍之介とコンビを組んでいるカーマーンは”行き当たりばったりの阿呆”です(それにしても龍之介の「お前最悪だよ」には肝が冷えますが)。でもそういうやつと組むのが人生であったりします。シャグシャグの活動も”ムカつく誰かをあそび半分で痛めつける”ものであり、カタルシスはあるものの「痛快」と言い切ることは躊躇われるバランスです。でも本当にシャグシャグの活動があるとしたら、それはきっと「痛快」ではあり得ない。こう言うとお嫌かもしれませんが、作品の背後に作者のモラルを感じました。 細かいところを言うと、”その喜びはさながら四半世紀ぶりに息子に再会した母親のようだ”など直喩が印象的で。今の時代直喩ってともすればダサいと言われがちなんですけど、この作品の場合パワフルで鮮やか。こんな書き方があるのかと書き手としていい意味でため息が漏れてしまいました。 様々な点で大変バランスが練られた作品に思えました。

5.0
  • 作品更新日:2021/7/7
  • 投稿日:2021/10/5