鞄の中の心臓
最終更新:2013/8/13
作品紹介
あなたは夏期休暇を利用して、久々に帰省することにした。 さびれた地元駅前の風景は見たところ、昔とほとんど変わっていないようだが、さほど懐かしさは覚えない。むしろその進歩のなさに、呆れに近い感覚さえ抱いてしまう。 昼間だというのに人通りもまばらな田舎の商店街を、ぶらりと歩く。するとあなたは、ふいに見覚えのある顔とすれ違う。 「あれ、お前もこっちに来ていたのか。奇遇だな」 小中学が同じで、その頃よく一緒に遊んだ友人。まともに会うのはもう十年ぶりだ。 あなたは彼と共に、近くの喫茶店に入ると、再会を喜びあった。話題はやがて互いの近況や生活状況、仕事内容等へと、とりとめなく移ろっていき、最終的には思い出話となった。 さて、しばしの歓談の後、一度手洗いに立ったあなたが席に戻ると、友人が言った。 「なあ、昔話ついでに、ひとつ聞いてもらいたい話があるんだが……」 先程と比べるとどことなく改まった調子で語りだした、奇妙な話。 ―――『あれは、俺たちが小学校6年生のときだったかな。クラスメイトに、クロカワっていう女の子がいただろ?』―――。 はじめは何の気なしに聞いていたあなたは、次第にその話の内容に胸騒ぎを覚える。
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