赤ん坊の溢れる風景
最終更新:2014/8/5
作品紹介
子どもの頃。 テレビのドキュメンタリーかなんかで、島中を覆う蟹の群を見た。 大量発生した蟹は島中を席巻して、島民は蟹を踏みつぶしながら生活をする。どこもかしこも蟹だらけだから、蟹を踏みつぶさなければどこにもいけないのだ。 だから、道路は踏みつぶされた蟹で埋め尽くされる。そんな風に、命がゴミのように扱われる光景を、俺は子どもの頃に見た。 そして、大人になって。 同じような光景が、俺の目の前に広がっている。 大量発生した、手のひらサイズの赤ん坊。 人間の赤ん坊と同じ形をした、異様に小さなそれは、水気のある所から現れて、大繁殖した鼠のように、入り込めるあらゆる場所を占拠する。特に路上の状況は深刻で、道路は赤ん坊で溢れているから、道行く人は赤ん坊を踏みつぶさなければ、どこに行くこともできない。 だから、人々は路上をハイハイする赤ん坊を踏み潰し、殺す。 ゴミのように、踏み潰される赤ん坊達。 街にこだまする『おぎゃあ、おぎゃあ』という鳴き声。 そんな赤ん坊の溢れる風景を眺めていた俺は、ある些細な出来事を切っ掛けとして、赤ん坊が何処から来るのかを知る事になる――。
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