赤色散華 ―金木犀、過去の匂い―
最終更新:2013/4/18
作品紹介
鈴が鳴っている。それを忘れる筈なんてなかった。 忽然と消えてしまった好きだった人。残されたのは『紫の空』という謎だけだった。 きっと守るからと鈴に約束を懸け、きっと見つけると願う今、けれど、血で染まった少女が笑う。 それは見たくない光景。瞼を閉じて閉ざしたい瞬間。でも、鈴が鳴り響いている。好きだった彼女に渡し、一緒に消えた鈴が、此処にいるよと、ちりんと鳴り響く。 守ると約束した筈なのに守れない。見つけると約束したのに、既に果てた美で笑う。 どうしようもない擦れ違いの物語。赤く染まった華は、そこにあった。 これは涙で作られた鈴と、血で汚れた夢のお話し。 どうしても許せない自分と、自分より大切なダレカの物語。 学園の日々は過ぎて行く。日常は通り過ぎて、くるくる回った。そして、あの人はもういない。 欠落として抱く果てに、夢は散った。 残された匂いは過去を思わせる金木犀のもの。けれど、それさえも現実を侵食していく。 もう居ない。もうないのだと。
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