智慧の貪狼 ~魔道学者は珍能力者を集めて魔窟を攻略する~
最終更新:2024/4/12
作品紹介
これはナーロッパ世界のしばらく後の、魔導文明の弊害で工業化の遅れた19世紀初頭相当の世界に送り込まれた技術者のお話。 金属加工の能力を授かったものの、ファンタジー度が妙に低い。不思議な金属もなければ、便利な道具が魔法で自動的に創造されるわけでもない。 自分で設計してドラフターで手描き図面を引いてインチネジの製造から自分でやらなければいけない。そんな世界での開発と製作、そして冒険と打ち上げのお話。 ◆ 最硬ステンレスSUS440C+炭化チタンコーティングのナイフでサクッサクッと解体作業を繰り返す。 新造したこの漆黒の俺モデルナイフには、密かに『ブラック・ウィドウ』と命名してある。グリップの部分には銅赤ガラスで装飾が施してあるという痛々しさだ。 ◆ 王国の蒸留酒に合いそうな物ね。 まずはある材料を確認する。キノコが余りそうだな。これでいくか。 大蒜をスライスして、スライスナッツと一緒に少量の植物油で揚げていく。これは可能な限り弱火がいい。カリッとなった片から順に取り出していく。 次に裂いたキノコを多目の胡椒と塩で味付けしながら、その美味くなった油で炒める。 最後に刻んだパセリと揚がったナッツと大蒜を合わせて完成だ。 ◆ 「あれこれって逆じゃないんですか?」 配置したマイクの『L』と『R』の表示のことだ。 「ああ、それは聴く人にとっての左耳側や右耳側ということなんですよ」 これはドラマーあるあるな話らしいが、ヘッドフォンで音楽を聴いていてドラムのハイハットが右から聴こえてきたりタム回しが反時計回りにパンされていたりするとすごい違和感があるのだそうだ。 演奏するドラマーからすればハイハットは左にあるし、タムは専ら時計回りに叩く。だがそれは客席から見れば逆となるのだ。 これは鏡で見慣れた自分の顔というものは他人から見れば左右逆だというのと同じで、自分の認識のほうが逆なのであって、見る側の認識のほうがやはり正しいのだろう。
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