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作:灰崎千尋

みひつのこい

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未評価

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最終更新:2020/8/27

作品紹介

未必の故意 〘法〙実害の発生を積極的に希望ないしは意図するものではないが、自分の行為により結果として実害が発生してもかまわないという行為者の心理状態。 (三省堂大辞林 第三版より引用) 第一回神ひな川小説大賞(テーマ:ハッピーエンド)参加作品です。

恋愛第一回神ひな川小説大賞

評価・レビュー

ホギャァァァーーーーッ!(※情緒を破壊され尽くしたので叫ぶしかない)

 どうやら他に本命の彼女がいる男性と、その彼と浮気な肉体関係を持っているっぽい女性の、なんか惑いや迷いや足踏みのお話。  まあ、その、もう、こう、アレです。叫びました。だってこれ、この、ああもうこの! いや本当これ読んでもらえれば絶対わかってもらえるというか、むしろ読み終えたらみんな間違いなくこうなってるはずっていうか、完膚なきまでに情緒をめちゃくちゃにされました。なんてことするの……。  さすがに内容に触れずにこのお話について書くのは難しいので、以下は思いっきりネタバレ、というかお話の核心部分に言及しています。  やっぱり一番凶悪だったのは最後の最後なのですけれど、でもそれもそこまでの積み重ねがあってこそのこと。というか、滑り出しからしてもう結構なパワープレイです。ラブホテルという要素のインパクトもあるのですが、「確か〜〜だったと思う」と露骨にこちらの興味を引きつけ、その上での「でも、結局私は〜〜」。この時点ですでに全体の軸となる〝未必の故意〟が出てきており、さらには「それがはじまり」と結ばれる導入部。  ここまでの情報量だけですでに凄まじいことになっているというか、前提や設定の全体象みたいなものが、ほとんどあやまたず理解できてしまう。それどころかこれが「はじまり」ということは、つまり「次」や「次の次」があると予告されているも同然なわけで、そしてまさにその「次」の話に乗っける形で、どんどん解像度を増してゆく状況の面白さ。  一切の隙がなくまた非の打ちどころもなく、ただとにかく「なんかヤバイのが来た」と震えるしかありませんでした。なにこの反則みたいな釣り込み方。読み手に「なんのこと?」とか「お、どうなるの?」と思わせるような、気にさせるポイントっていうか餌のぶら下げ方がうまく、しかもその「気になる」を追ってるだけで説明が完了してるんですよ。なにこれ。なんかヤバイの来た。みんなにげて!  というわけで、ここからはこの物語の幕切れについて個人的な悲鳴をあげまくりたいのですけれど、いやもう嘘でしょこんなのってあります? さっき上の方で「完膚なきまで」という語を使いましたが、でもこの主人公の至った結末、これほど完膚なきまでに「完膚なきまで」してるお話は生まれて初めて見ました。  いやまあ、ある意味じゃそりゃ自業自得っていうか、この主人公だってまったく褒められたものではないのですけれど。むしろ客観的には結構最悪な女で、どうしようもない奈落に自分からハマってなお言い訳してるような絶妙な無能感はあるものの、でも全部許します。許しました。これを許さないはずがない、だって共感というか感情移入というか、この人は完全に私自身なので。  未必の故意。賢しくも故意だと自覚した風でいるくせに、まだ心のどこかでそれが犯罪成立要件にはならないと思ってるかのようなこの甘ったれ具合。ほらね私です。そしてこういうのは私のことだと思えば、即座に徳政令を発してなかったことにできるもので、特にこの場合は男の方もひどいから責任転嫁が簡単というのもあって、遅くとも中盤くらいにはほぼ「いいぞやっちまえ」というスタンスで読んでいました。  なにをやっちまうかはほぼ読んだまま、せめて一矢報いる、というかほとんど八つ当たりのような。自爆テロ。まずろくなことにはならないとはわかっているけど、でももう何だっていいからとにかくひどいことになれ的な。いやその結果どうなるかなんて考えてないというか、絶対一番痛い目見て泣くのは私なんですけど、そんなのそうなるまで見なければいいだけの話なので。なってから泣こう。大声で、誰かがなんとか後片付けしてくれるまで。ひたすら。  ——という、そのつもりがまさかのこの結末。  まさかこんな、だって、いや嘘でしょここまで完膚なきまでに負けるか普通? という。  いやええわかりますよ、確かにこうなるしかないんです、実際それくらい差があるのは最初からわかって——いやわかってはいなかったですけど、むしろこの物語の流れなら行けると甘く見積もってましたけれど、でもわからされました。  いや後から読み返せばそうなんですよ、向こうふたりはもそもそも住む層が違う。でも、だからってここまで、こう……ひとかけらの手心さえないというか、最後一行とかもう悪魔かと思いました。あまりにもあんまりなその一文を、ただそれだけなら無理矢理耳を塞いで「はい見えなーい私なんも見ませんでしたー」と突っぱねることもできたものを、でもうっわあこれきっちり伏線(とは違うかも? でも予告済)張ってあるじゃないですかァァァ! とまあ、いや本当それ気づいた瞬間もうダメだと思いました。死んだ。こんなの情緒がもつわけない。未必的っていうか確定的殺意では?  やられました。メタメタに、もう感想も解説も言えなくなるほどに。実際悲鳴しかあげてないのはご覧の通りで、大変申し訳ない文章ではあるのですが、でも『ひとりの人間をこうしてしまった作品』ということの証拠として書きました。最高でした。とても面白かったです。

5.0

和田島イサキ