『ノリと勢いだけで生きている』と評される主人公の元に、幽霊の女の子がやってくるところから、物語は始まります。しかも美少女の。これには、パンツ一枚だった主人公もニッコリ。しかしお願いされた内容は、自分と成り代わったドッペルゲンガーの殺害。何やら不穏な頼み事でした。
しかしそこはノリと勢いだけで生きている主人公。一緒になって馬鹿をやれる相棒を引っさげて、何やら悲壮な思いを胸にしている幽霊の女の子を振り回し始める、というのが大まかなあらすじです。
もうとにかく、随所の言い回し、キャラ同士のやり取りが面白い。真面目な話かと思えば、必ずオチを用意しているという周到っぷり。それは各話ごとのタイトルですら笑えてくるもので、作者様のセンスが光ります。更には京都という街や、周囲の描写が簡潔かつ解りやすいものとなっており、気がつくと物語の世界に引き込まれていました。
最初は好奇心のようなもので突っ走っていた主人公ですが、幽霊の彼女について、そしてドッペルゲンガーについて調べていく内に、段々と考え方が、そして物語がその様子を変えていきます。私が最近習った言葉を使えば、ミッドポイント、というやつでしょうか。そこからの展開は切なく、最初の馬鹿っぽさは一体何処で迷子になってしまったのか、と思うほどの見事な上げての落とし方。そこから打開策を見つけ出し、奔走してのラストへの盛り上がり方。細かい伏線の拾い方が丁寧で、ラストの方はもう一気に読み切ってしまいました。
最後の方は、若干ウルっときてしまったのは、内緒ですよ。
笑いあり涙あり、そして時に考えさせられ、更にはスカッとすることもできる、そんな物語。読まないなんてもったいないですよ。
他の皆様も、是非読んでみてください。
登録:2021/7/18 14:40
更新:2021/7/23 17:15