「壮大な」という印象を、最初の小さな村のエピソードだけで感じられるのは、この世界観がまるで実在するように丁寧に描かれているからであろうか。
空には雲が流れ、風が花と草の香りを運んで来るのがわかるような緻密で繊細な情景描写と、登場人物の静かな感情の揺らぎすらも丁寧に描き出されるこの作品。
一見平和で落ち着いて見えるこの世界には、魔物の被害…黒魔とよばれる魔物による甚大な影響を受けていて、その増加の理由は不明。
主人公セフィは、聖女位としてヴェルトゥという村で暮していた。
過去、この村も黒魔により半壊したことがある。
そんなある日、再び村に危機が……?
この事件をきっかけに、運命は交錯する。旅に出るには名の知れた護衛が必要というセフィと、治癒の力を持つセフィを己の目的のために連れて行きたいクローネは出会い、セフィは小さな村を出て、自分と世界を知って行く旅がはじまる。
聖女とはいったい何者なのか、黒魔とはいったい何なのか。世界はどのようになるべきなのか。交わる運命は二人をどのような結論に導くのか目が離せません。
通常の物語ではモブとして名前が出る程度の登場人物の心情さえ丁寧に描かれ、彼らの気持ちを知る事で主人公セフィの輪郭がより濃く表され、小さなエピソードも余す事なく記される物語はまさに大河小説。
一人の聖女位の少女の旅路に、あなたも付き添ってみては。
登録:2021/7/27 04:47
更新:2021/7/27 04:46