埋もれているのがもったいない作品だと思うのですが。Webではライトノベルが強いせいでしょうか、文芸系の作品は、それを求めている読者までなかなか届かないようで……いやほんとにもったいない。
物語は、主人公である日本人男性が、かつて働いていた中東のどこかの国に戻ってきたところから始まります。主人公は何か大きなトラウマを抱えていて、そのトラウマは、どうやら彼がその国を離れる原因となった事件に関係するようで……。
主人公を出迎えた現地のドライバーとの会話、戦争の傷痕生々しい町の様子、主人公の内の葛藤……。それらを通じて彼の過去に起きた事件がはっきりと姿を見せた時、そして、事件が引き起こされた原因とその後の結末が明らかになった時。物語自体はフィクションではありますが、現実のとある国がこちらの脳裡に浮かび、主人公の覚悟に頭の垂れる思いがします。
短いながらも人のありようを描いた良品です。
登録:2021/9/4 00:23
更新:2021/12/7 18:59