主人公はアップルパイを携えて、四年お世話になった先生の研究室にお礼と挨拶をするため訪れます。
そこにどのような想いがこめられているか。
ただお世話になったからと、挨拶に来た学生のお話として読むには、切なさが香ります。アップルパイを選んだ理由も、それを言えない理由も、パイを分けた時の様子から生まれ出る気持ちも。
ビニールの切れ端がくっつく机に、思い出。
たくさんの本に囲まれて、いつもそこにいる先生。
卒業してしまえば会う機会もないけれど、せめて夢で逢えたらと願ってしまう心が、もどかしいような寂しいような、味わいのある物語として丁寧に描かれています。
秋の夜長に大切に読みたい作品です。
登録:2021/9/15 19:41
更新:2021/9/15 19:40