これはすごい。すごいぞ。素晴らしい作品だ……、と一気読みしたのち、その興奮がまだ覚めもしないうちに、気付けば応援レビューの画面(※ノベルアップ+での初読時の話です)を開いてしまったのですが、そこで手が止まってしまった。どう、この魅力を伝えればいいのだろうか。困った……。
事前に知らないほうがいい部分にも言及しようと思ったので、今回はネタバレありとしましたが、知らずに読んだほうが絶対に楽しい作品だと思うので、ぜひこの文章を読む前に実際の作品に触れていただけたら、と思います。
本作の主人公は「枕草子」の作者として知られる清少納言……と言っても歴史小説ではなく、彼女は二十歳の姿のまま現代を生きている。二十歳のまま不老不死となり、病気はすぐ治るし、手首を斬り落とされても死なず、千年の時を経ながら現代社会に溶け込む女子大生の清少納言が「清の千年物語」というブログを綴る、というSF中編なのです。清少納言がブログを書き、大学生活を楽しみ、司馬遼太郎を愛読する……というのはなんとも不思議な感じがしますね。ただブログという体裁を取っているので、もしかしたら清少納言の振りをした別の誰か、と読み方ができるのも楽しい。
本作は深い知識に裏打ちされたとても豊穣なフィクションです。日常を綴るというテイストだけでは終わらない物語としての色を強める展開もあり、そこについてこのレビューでは明かしませんが、実際には清少納言が紫式部とは面識がなかった、と言われているらしくて、またそのことが本作の導入に書かれているのですが、そんな物語にささやかな色を添えるための文章に思えた設定が、後半になって活きてくる内容になっています。
えっ、まだ読んでいない? では想像の旅へと行ってらっしゃい。
登録:2021/11/14 01:42
更新:2021/11/14 01:40