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清少納言、現代を歩く。

5.0
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 これはすごい。すごいぞ。素晴らしい作品だ……、と一気読みしたのち、その興奮がまだ覚めもしないうちに、気付けば応援レビューの画面(※ノベルアップ+での初読時の話です)を開いてしまったのですが、そこで手が止まってしまった。どう、この魅力を伝えればいいのだろうか。困った……。



 事前に知らないほうがいい部分にも言及しようと思ったので、今回はネタバレありとしましたが、知らずに読んだほうが絶対に楽しい作品だと思うので、ぜひこの文章を読む前に実際の作品に触れていただけたら、と思います。




 本作の主人公は「枕草子」の作者として知られる清少納言……と言っても歴史小説ではなく、彼女は二十歳の姿のまま現代を生きている。二十歳のまま不老不死となり、病気はすぐ治るし、手首を斬り落とされても死なず、千年の時を経ながら現代社会に溶け込む女子大生の清少納言が「清の千年物語」というブログを綴る、というSF中編なのです。清少納言がブログを書き、大学生活を楽しみ、司馬遼太郎を愛読する……というのはなんとも不思議な感じがしますね。ただブログという体裁を取っているので、もしかしたら清少納言の振りをした別の誰か、と読み方ができるのも楽しい。


 本作は深い知識に裏打ちされたとても豊穣なフィクションです。日常を綴るというテイストだけでは終わらない物語としての色を強める展開もあり、そこについてこのレビューでは明かしませんが、実際には清少納言が紫式部とは面識がなかった、と言われているらしくて、またそのことが本作の導入に書かれているのですが、そんな物語にささやかな色を添えるための文章に思えた設定が、後半になって活きてくる内容になっています。


 えっ、まだ読んでいない? では想像の旅へと行ってらっしゃい。

サトウ・レン

登録:2021/11/14 01:42

更新:2021/11/14 01:40

こちらはサトウ・レンさんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

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EGGMAN

終わりに見る光景は

〈おれはとてもしあわせだった。〉  終わりに見る光景がどんなものがいいかって、たぶん、終わりも知らない人間が気軽に語っていいのだろうか、とは思うのですが、でももしも終わりを前に、しあわせ、を感じるとしたら、彼が終わりに見たような色彩なのではないか、と感じました。  日本で発症を確認されたのがおそらく二例目とされる奇病中の奇病、俗に〈エッグマン病〉を発症した〈俺〉は、体が縮みハンプティ・ダンプティのようになっていく病魔に蝕まれながら、入院先で孤独に過ごした。そして退院の日、身寄りのない状況に困っている〈俺〉を迎えにきてくれたのが、幼馴染のモモこと桃園陽一だった。モモは縮んでしまったりはせず、そしてふたりは旅に出ることになった。……というのが、導入です。ですが、奇病の妙なリアリティ、旅の中で見る景色、感情を交わしていくふたりの姿の魅力は、縷々とあらすじを綴ってみたところで伝わるものではないでしょう。ぜひとも私のレビューなんかよりも、本文を読んで欲しいところです。 〈モモがペダルを漕ぎ出すと、世界の感覚が一気に変わった。最初はかなり揺れて気分が悪かったが、しばらくするとおれは残された手足を使って、クッションを敷いたキャリーの中で居心地のいい姿勢をとれるようになった。〉  何故、会社をひと月休んでまでモモが、〈俺〉と一緒にいることを選んだのか、そこに関する一応モモの口から語られる部分はありますが、必要以上に、詳らかに明かされることはありません。でも分かりやすい言葉を当てはめるよりもそのほうがずっと、心を寄り添わせやすい。  進行の続く病のいまを写し取るような変わっていく文体に、彼らのいまを感じ取りながら、幕を閉じて、切なくも静かな余韻に包まれる感覚がありました。

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サトウ・レン