いつのことだったか、うらひとさんの創作について、雨上がりの虹のようだと評したことがあります。そこに綺麗な虹を見せてくれているのだけれど、その足元には実は雨上がりの濡れた地面が広がっているのではないかと、私はそう感じます。足元を掬うとか、そういう意味ではなく、深い思いを持った上で、綺麗な作品を見せてくださっているように思うのです。
喫茶店フォレスタは、紹介文にも記されております通り、個性豊かで優しい家族を中心に展開する現代日常系短編集です。各メンバーに焦点の当てられた章があり、いくつかの短編で構成されています。章の表題になっている人物たちは焦点を当てられてはいますが、そこには他のメンバーとの関わり合いがあり、個性は独りでは成り立たないことを示しているかのようです。
この作品については、うらひとさんの作品の中でも特に強めの幻覚が得られることが知られており、ショップカードが実在するほか、行ってみた空想、二次創作などの話もたまに聞かれます。とか書いている私も、割と強い幻覚を楽しんでいるので、もうお察しくださいと言いますか。いやもう、本当に、常連客になりたいものです……。
他人と違いすぎることに関して、密かに悩んで個性を埋没させようとしている方がいるなら、是非ともこの『喫茶店フォレスタ』を読んでいただき、勇気づけられて欲しいと思います。
登録:2021/12/18 02:24
更新:2021/12/18 02:23