嵐の中、雨に濡れて学校へ到着した高校生ハル(五十嵐晴)に、突然話しかけてきたクラスメイトの少女(十時楓)。
今まで接点もなくハルに注意を向けてくることもなかったはずの彼女は、彼に友だちになって欲しいという。
けれどハルはすげなく拒絶する。彼女に、「嘘つき」と言葉を投げつけて。
ハルの強い拒絶の底にあるもの。「風と木って、似てるよね?」という、十時楓の奇妙な言葉の意味。その二つがわかった時、物語は読者であるこちらへ、長く引き攣れた痛みの、爪痕を残していく。
巧みな構成と譬喩による暗示を駆使して書かれたこの物語は、流し読みではその真の味わいはわからない。ぜひ読みこんでみてほしい作品。
登録:2021/7/11 02:40
更新:2021/7/23 17:15