恋愛小説で指先が痺れる瞬間がある。
比喩ではなく、心臓がきゅうと縮まって、血流が滞って、指先がピリピリとなる瞬間が。
台詞一つ。
主人公に対する好きだというヒーローの想いが表れ、だけど十分に乗せることはできなくて切なく溢れ落ちるものを、想像する、感じる。
台詞一つで、指先が痺れる。その台詞になるまでの物語がある。込められた想いの想像を、作者によって確かに導かれる。
こわばった指先でそっと抱えて愛しみたい作品。
作者の守野伊音さんの作品はどれもが、迷い後悔し大切なものを抱える登場人物たちの感情が胸に迫ります。
人としての想いを物語の展開に乗せ、胸を打ってくる切なく愛しい作品を書かれる、屈指の作者様だと思っています。
個人的な好き基準としてある、物語構成、登場人物の魅力、台詞、文体のリズム、どれもを押さえているのではありますが、今回は中でも台詞で魅せられた作品から。
登録:2021/7/10 01:00
更新:2021/7/23 17:15