この作品は、武術エッセンスを取り込んだ現代怪奇ファンタジーである。漫画で言うなら、「スプリガン」などを好んで読んでいた方々には良く刺さるだろうか。
それにしても、これ程までの正統派の現代ファンタジーは久方ぶりに読んだ。武術の技で言うなら、腰を据えての真向正拳突きを喰らったような気分である。
この作品には、作者様の武術に対する深い造詣が端々に見られ、舌を巻く思いだ。歴史や武術史の中の逸話を、さりげなく物語に溶け込ませるセンスが素晴らしい。それも、知識に淫するのではなく、軽妙なテンポで進行する物語の中でさりげなく混ぜ込まれるので、知識の無い読者でも楽しめ、武道武術に感心のある読者は更に倍楽しめるという、心憎いつくりとなっている。
アクションシーンは一挙手一投足まで気を配られているのが感じられ、しかもその技は実在のものを下敷きに昇華されている。今後の展開が非常に楽しみな一作である。
登録:2021/7/10 01:00
更新:2021/7/23 17:15