ユーザー登録・ログイン

新規登録

ログイン

作品

レビュー

登録/ログイン

その他

オノログについてFAQ利用規約プライバシーポリシー問い合わせユーザー管理者Twitter
レビューを投稿
書籍化
コミカライズ原作
ジャンル別
サイト別
サイト関連
運営している人

@オノログ

小説家になろうヒューマンドラマ連載:7話完結

蝶を吐く

「蝶を吐く」という、それだけで妖艶かつ幻想的な画と、蝶吐師オリエの魅力。 それらが憧憬や嫉妬や虚勢といった心の有り様を芯として描かれる物語と、美しいハーモニーを織り成していました。   冒頭の蝶を吐くパフォーマンスから、読み手をぐっと引き込む美しい雰囲気が作られています。 薄く開いた口から蝶の翅の鮮やかな色が覗く様がとても艶めかしく、物語への期待が膨らみました。   オリエの人物造形もとても魅力的です。 才能のある人間特有の傲慢さと、だからこその愚直さ、そしてその裏にちらつく脆さが、序盤からありありと伝わってきました。 そういう彼に、一番近いところから憧れを抱く語り手の心に、読み手がはっきり寄り添えるくらいに、オリエが魅力的に描かれていたところが、また素晴らしいです。   その語り手であるジェラが、カマラという女性の登場で揺らぎ始め、そこから彼の心が少しずつ見えてくるところがポイントでしょうか。 胸にしまっていた気持ちから、自身さえ気づいていなかった本心までゆっくりと読み手を誘ってくれます。 そして、その過程がとても切ないです。   ですが、迷っていた、悩んでいたのが彼だけでないのが分かった瞬間が、私には最も切なく愛おしく感じられました。 オリエが独りよがりとも言えるような自身の思いをぶつける瞬間。 誰かの中で一番でありたいと思う彼らしい傲慢さと、けれどきっとその「誰か」は誰でもいいわけではなくて、彼の中で大切な人物にだけ抱く彼なりの愛情なのだと感じられました。 感情の種類は違っても、お互いに大切に思いあっている二人の、けれどこれ以上一緒にいられないという現実が、切なかったです。   それでもそういう悲しさだけで終わらなかったのも良かったです。 そのトリガーとなるものも、きちんと提示されていて、納得のいく変化でした。 後は、はじめは憎まれ役とも思われたアジャイが、強欲(というか商売人)ではあるけれど決して悪人ではなく、それなりの器の大きさを持ち合わせた人物だと感じられたのも嬉しかったです。

5.0
  • 作品更新日:2018/3/31
  • 投稿日:2021/7/12
カクヨムその他短編完結

アリス・イン・ザ・金閣炎上

一人称の台詞回しが、文学的、且つ、エッジィなウィットに富んでいて、暴力的なまでに文章に引きずり込まれてしまいます。 語彙ひとつ、引用ひとつとっても、尖ったおかしさに溢れていて、それが矢継ぎ早にどんどん出てくるので、のめり込む以外に選択肢がありません。 ごく個人的な感覚ですが、ナウシカの引用はすごかったです……。 その、書き手の方の知識の広さ故のユーモアには、どんどん、どんどん「少女」と「女性あるいは男性」の途上にある語り手の内包する生々しいリアルが滲み出してきて、そこにある凄味に圧倒されます。 特に、序盤で何気なく語られた上京する以前のことが回収される場面では、強烈に感じ入るものがありました。 思春期の少女たちの世界は、生々しく、耽美的な危うさに充ちています。 そしてその中に縛り付けられるような閉塞感が、読み手側にまで感じられるくらいに身に迫る文章で描かれて、まったく自分とは違う語り手の焦燥が、けれど肌に感じられました。 そして、終盤の「炎上」のシーン。 笑いがこみあげてくると共に、そこには気持ちのいい解放感、カタルシスが溢れていて、まさに物語の終幕にふさわしいなと思えます。 突飛な行動にも関わらず、それを気持ちよく、楽しく、そしてリアルに感じてしまうのは、そこまでで語り手の内面にのめり込んでしまったが故でしょう。 ラストの一文まで気も利いています。 たいへん面白く、楽しく、同時に皮膚にジリジリとしたものを感じられて、読んで良かったと思える作品でした。

5.0
  • 作品更新日:2020/7/13
  • 投稿日:2021/7/10