魔月恋月 〜をとめの恋は月下に咲く〜
開国まもない日本国の帝都を舞台に、悪魔殺しの異人青年と心優しい女学生の恋愛譚を描く、歴史浪漫風ファンタジー。 作中で描かれる文化や習慣のみならず、綴られる語りの文すらも「明治時代風」に仕立てあげられた、こだわりの逸品です。 帝都の寄宿女学校に通う士族令嬢・月乃は、父を亡くしてから、義妹の亜矢に虐げられる日々を送っていました。ある日、義妹の「お醤油がほしい」という我がままのせいで、夕暮れ時だというのに外へ買いに行く羽目になります。 時刻はいわゆる「逢魔が時」。急ぎ帰る月乃の前に現れたのは、傷ついたフクロウと異形の影。そして漆黒のマントをはためかせる異人の男性――。 運命的な出会いを果たした二人の関係と、二人の周りで起きる吸血鬼事件とが絡み合い、物語は進展していきます。ドイツ語を話すミステリアスなフリッツ氏と、亡くなった父が医師である月乃との間には何か縁があるようで……? 丁寧に描かれた世界観と魅力的な人物たちが織りなす、明治文化風・恋愛浪漫譚。ぜひご一読ください。
- 作品更新日:2022/12/22
- 投稿日:2021/7/27
壊刀団伝・乱之巻
史実とは少し違う日本を舞台に、闇の心を魅了する「妖刀」と、それに対抗するため組織された裏の新撰組――「壊刀団」、その闘いを描いた時代小説風のバトルファンタジーです。 時代モノに見合う密度の高い文体ですが、読みにくさはありません。重厚さを保ちつつも軽妙で読みやすい、そんな筆致になっております。 物語は、「見ない、聞かない、言わない」を中核とした、三本立ての短編集。大見出しごとに別の人物が描かれていますので、気になった所から読むことができます。 まずは最初の三話、1万字ほど読んでみて、雰囲気を味わってみてはいかがでしょう。 各話に出てくる中心人物は、かなり癖の強い人物です。盲目や難聴といったハンデを持ちながらも妖刀を自在に操る、いわば天才たちなのですが、人物造詣が巧みなので好感が持てます。 彼らに憧れ、あるいは見守る周囲の仲間たちも人間味あふれる人たちで、心の動きがこまやかに描かれていきます。 迫力あるバトルアクション、心の闇と対峙する人々の葛藤、そういった見どころが散りばめられた伝奇時代小説、ぜひ読んでみてください。
- 作品更新日:2020/1/31
- 投稿日:2021/7/27