幽霊彼女とラストファーストキス
普通だけど普通じゃない男子高校生、折原洋平がお墓参りで父と話し握手をしていると、深夜の墓場に突然女の甲高い叫び声が響く。 そして現れたのは幽霊の美少女、千堂椿。 椿は洋平が”幽霊の”父と握手をしているところを発見し、幽霊が見えて触れる事までできる彼こそが自分の願いを叶えてくれる運命の人だと確信して生前の未練であった「キス」をするように猛アプローチを仕掛けるのであった。 片や洋平は突然現れ、死語を連発し変なテンションでキスを迫ってくる椿に困惑しながらも、一途で可愛らしい椿にどんどん心惹かれ、椿の思惑もありキスをしたい欲望に駆られる。 しかし洋平は知っている。彼女とキスし、未練を晴らすことは、愛する彼女との別れを意味することを…… 椿のキャラが強烈に可愛らしく、甘く切なく心ときめくシチュエーションの中で葛藤に苦しむ洋平との関係がコミカルに描かれていて、衝撃のラストに思わずニヤニヤしてしまう、そんな素敵な作品です。
- 作品更新日:2019/12/5
- 投稿日:2021/7/13
スリラー・ナイト
町にはゾンビが溢れ、俺は合流した他の生存者とともにビルの一室に逃げ込み、協力してバリケードを張る。 生き残ったのは頭が切れて行動力もあるインテリイケメン、特殊部隊の軍人女、何らかの実験を受けたという可愛い系の謎の美女、いかにも気の弱そうなサラリーマンのおっさん、そして俺。 俺はこの状況を知っている。知った上でその役割を演じている。 だが、どうやら他の奴らはそうじゃないみたいだ。 俺はこの先の展開を知っている。知っていたからと言ってどうにかなるわけでもないことも知っている。 俺にできることはただ一つ、どういう覚悟でその役割を演じきるか? それを考えるだけだ。 だがしかし、こんな運命も、もしかしたら悪くないのかもしれない。
- 作品更新日:2019/12/13
- 投稿日:2021/7/13
コント「ジャンケンで関脇る方法」
ある日ある時ある所、二人の男が対峙する。 片やボケ、片やツッコミ。 互いに相手の技を読み、裏をかき、万感の思いを込めて拳を突き出す。 その印相(かたち)は奇(くし)しくも等しく、双方ぴたりと拳を止める。 ボケは云う。 「…引き分けか。じゃあまた今度」 ツッコミは訝しむ。 「引き分けってなんだよ」 本来この勝負はどちらかが斃(たお)れるまで拳を繰り出し合う死闘。 引き分けで済ませることなど許されようはずがない。 ツッコミが問い質(ただ)すと、ボケは互いの繰り出した拳の印相(かたち)にその所以(ゆえん)があると応(こた)える。 斯くして戦火の足音が迫る中、その決着を着けるべく再び両者が対峙する。 引き分けとなった拳の印相(かたち)とは? 関脇るの真意とは? 残された父子の運命は? そして、その勝負の行方は―― コント「ジャンケンで関脇る方法」 どうぞお楽しみ下さい。
- 作品更新日:2019/10/6
- 投稿日:2021/7/13
カツサンドの彼
バイト先のベーカリーに毎日決まった時間に現れ、決まってカツサンドを買っていく謎の男子のことが気になる野乃花は馴染みの友人たちに相談し、『カツサンドの彼』の正体を探るべく憶測を巡らせ策略を練るが…… 果たして『カツサンドの彼』の正体とその思惑は? そして、彼のことが気になる野乃花の気持ちの真相と行方は? 個性豊かな仲良しJK四人組が『カツサンドの彼』を巡って恋バナに花を咲かせる様子が楽しく活き活きと描かれていて、意外と〇〇な彼と野乃花の温かな未来を予感させる結末も素敵なお話です。
- 作品更新日:2019/11/30
- 投稿日:2021/7/13
Hekátē
いらっしゃいませ。 ……大丈夫ですか?お客様。 随分と思い詰めた顔をしていらっしゃる。 さぁ、こちらへお掛け下さい。お話を伺ってもよろしいですか? あぁ、そうでしたか…… 先日の通り魔事件で恋人を…… お気の毒に…… ……それは思い過ごしかと。その麗しい名は無敵の女王にして死を司る美しき女神。彼女の薬効(あい)はそのように下卑たものでは無いと伺います。きっとただの屑(ダスト)でしょう。 お待たせしました。オールド・パルです。 もし、お客様がその気でしたら、そのコースターの裏に書いてある場所をお訪ね下さい。 合言葉は 『Hekátē』 運命の交差する場所に立つ彼女が、きっとお客様を満足させることでしょう。
- 作品更新日:2019/7/13
- 投稿日:2021/7/13
花と頭蓋
偶然再開した憧れの先輩に不意に聞かされる思いがけない言葉、自らのこめかみを指差し、冗談めかして儚い笑みを浮かべ、ここに花の形をした爆弾が埋まっている。と。 その花は開花とともに死をもたらす未知の病、その養分は消化されずに滞留する思考。 未だ蕾のその花の開花を抑える術は、頭蓋の中に渦巻く想いを言葉に綴り続けること。 その開花を拒むため、二人は共に生き、想いを言葉に綴る生業に希望を託す…… 別れのときが迫る中で穏やかな生活を営む二人だけの世界は、手を取り合い懸命に生きる姿を描きながらもどこか退廃的で、迎える結末も甘美で儚い、まさに桜の花のように美しい物語です。
- 作品更新日:2019/11/29
- 投稿日:2021/7/13
プロキシマ・ケンタウリからきたオウムアムアがヒューメイリアンのパンスペルミアだったらどうする?
二人にしかわからない暗号的会話を説いていく過程で彼女の魅力を描き本当にヒューメイリアンなのかもと信じさせる構成が楽しい作品でした。
- 作品更新日:2020/2/2
- 投稿日:2021/7/22
翠の傘の君
年中雨の絶えない国の田舎の小さな街、少女の雨の日の楽しみは古アパート4階の自分の部屋の窓から道行く人を観察することだった。 今日もアンニュイな気分で階下の道を行き交う人々の個性豊かな傘を眺めていたとき、落ちる雨粒の軌跡を視線で追い、それが目に飛び込んでくる。 ――翠の傘だ。 雨音のノイズ、モノクロームに染まる街並み、その中で瑞々しく咲く翠の傘の鮮やかさ、そこに落ち、弾け、光と散る雨の雫の一粒一粒が…… 映画のワンシーンのような光景が目に浮かぶとともにその音まで聞こえそうなほど美しく丁寧に描写される世界の中、アンニュイな少女が『翠の傘の君』と出会い、別れ、成長する姿が活き活きと魅力的に描かれた作品です。
- 作品更新日:2020/10/21
- 投稿日:2021/7/13
エプロン💝マニア
夫のそこまで変態的ではないちょっとえっちな願望を実現してあげようと羞恥をこらえて裸エプロンに挑戦する主人公の若奥さん。 ところがなんと若奥さんは肌が極端に弱くて普通のエプロンを素肌につけると、とたんにかぶれてしまう。 このままでは夫の願望を叶えられない。 妻にこんな辛い思いはさせたくない。 お互いを思い合う二人はデパートに出かけエプロン売り場を見に行くが、上質な生地のかわいいエプロンは手に取るには躊躇するお値段。 そこでは二人ミシンと上質の生地を買って自分達で愛を育む用のエプロンを作ることにしたのだが…… 愛する夫の願望を叶えるために、愛する妻を気遣いつつ可愛い姿を見るため、二人が手を取り合ってエプロンと向かい合い、様々なエプロンを作って新境地を開拓していく様子が、奥さんの可愛らしい一人称で描かれたコミカルで優しいホームドラマです。 きっとこの作品を読んだ人はこう言うでしょう。 これがエプロンの可能性か……! と。
- 作品更新日:2019/12/25
- 投稿日:2021/7/13
お賃金に目がくらんだ私の末路
人はいったい何の為に働くのか? 誰しもが週六日位のペースで抱くであろう疑問に、いつもの田中がいつもの如くペンを執り、身と心を削りながら現代社会の病理に敢然とメスを突き立てる社会派ドキュメンタリー。 果たして、そのハラワタに巣食うモノは何なのか? お賃金無しには生きられない身体になってしまった田中の運命や如何に。
- 作品更新日:2019/5/19
- 投稿日:2021/7/13