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カクヨムノンフィクション短編完結

まるで明日が来ないかのように

なんでだろうな、と思いまして。なんで私はこの作品をよいと思ったんだろうと、それが最初すごく不思議でした。いや、とてもレベルが高いです。そしてこの作品でそれを言われるのは嫌かもしれませんが、非常に上手いです。でもなぜなのだろうと。 少し自分の話をして恐縮なのですが、この作品も私の作品も第一回イトリ川短編小説賞に参加してました。私は思い切り後ろ向きなものを書きました。イトリ川に参加したほんの数週間前に自殺を図って、そしてなぜか継続していく自分の生を半ば呪いながら作品を書きました。この作品と全然方向性が違うんです。でも、とてもいいと思ってしまった。すんなり来てしまって。 その眼差しを持つ自分はいるよなと思ったのでしょうか。私はその感情を実際に持ったことは無いのですが。状況は特殊です。間違いなく読者の九割は弟が正体不明の腫瘍で入院した事なんてないでしょう。同じ状況で同じ反応もしないでしょう。でも少なからず――経験したことの無い――その眼差しは、手の動きは心当りがあるときっと私は思ったし、恐らくそう思った人は何人もいたのです。 手の動きといえば、削除していくのもそうなんですけど、コーヒーを淹れてしまうのが印象的で。その恐らくルーティンであろう動きをそこでやってしまうのがルーティンであるからこそ感情的だよなと。 非常に感情に関して抑制的な作品です。でも知らないはずの、静かに動き続けるその手に共感するのです。弟どころか自分の生すら願えない人間であっても。

5.0
  • 作品更新日:2020/7/18
  • 投稿日:2021/10/5
カクヨム恋愛短編完結

おはようマイヒーロー

最初はそれこそ「不可解」で、でも「きみだれ!? ぼくなに!? 鬼どこ!?」らへんから落ち着いて、その直後のフルスイングされる金棒が生んだ”ロマンチック”な光景に息を呑むんです。呑みながら、もうなんだか気持ちよくて。信頼感みたいなものが生まれます。訳が分からない、訳が分からないが、この世界はとても魅力的なんだって。 これ書くために二周読んでるんですけど、流れ鬼に祈るところ、一周目はちょっとコミカルに読んだんですが、二周目はまたこう感慨が違っていました。あと一々背景がいいんですよ。マンハッタン、メロンパンのような銀河系。脳が揺れるおしゃれさです。全然違うものだけれども帆多さん的世界にまとまっている。 そして「本番五分前」。この否応なく進んで行く感じ既視感あるよな、上手いなと思いました。ここで、こんなに姫君を儚げに可愛く書くか、それはずるいよ! その後はああ……って。甘い可愛い。そこから後も素敵。 いちいち楽しそう、いちいち魅力的、いちいち不条理、それはいつかは終わる。けれどもその中ではなんだって出来る。その世界特有の寂しさの訪れが予感される一方で、今ばかりはなんだって、なんだってできる。きみを助けに行く。 こんなに賑やかで波乱万丈なのに、純愛もののような美しさを感じるのは私だけでしょうか。そう、とてもきれいでした。

5.0
  • 作品更新日:2019/3/23
  • 投稿日:2021/10/5
カクヨムSF短編完結

2064

初っ端まず滅んでいて、何が起こったのかが次第に明らかにされていく話。やったことある人は分かると思いますけど、終わりが決まっているドラマって書くの難しいですよね。ある種のハードルが設定されてしまうというか、途中をどれだけ面白く書くかが試されているというか。その点この小説は……お見事でした。 まず、主役が日本の女学生と小学生なんですよね。乗りやすい。そして滅びの要因となるあれも、みんな何だかんだ不思議がってはいるんだけど、日常にすんなり入り込んで来ている。ちょっとホラー味があります。素敵。そして滅びの叫びをあげる主体も、美しいんですよ、美しいはずなんです。でもそれが目に見えるかたちになった時の「もうだめだ」感がすごくて。 いいところ沢山あるんですけど、最後に、滅亡のもの寂しさが伝わってきて、それがよかったです。声はこびりついているんですけど、もうそれ以外の音は無くなっちゃった感じが文章から伝わってきて、どうやってるんだこれと思いました。 よい滅びの短編を読んでしまいました。

5.0
  • 作品更新日:2020/10/1
  • 投稿日:2021/10/5
カクヨムSF連載:3話完結

俺の事が好きすぎて何でも言うことを聞いてくれる幼馴染が可愛くて仕方ない件

確かに嘘は言っていないどころか、退廃的ラブコメの常道を踏んだ描写もあり、そのあたり短編ラブコメとしても優れていて、羨ましいかと言われて羨ましくはないが、ちゃんとラブコメだ、タイトルから期待される通りだ、教授は何でも書けるんだなと思いながら見ていたら、それで終わるわけないのであって、結局どこに連れていかれたかってそりゃ……、というわけでタイトルに対して物語が最強です。教授ファンとラブコメ好きな人におすすめです!(全く嘘は言っていない)

5.0
  • 作品更新日:2020/10/14
  • 投稿日:2021/10/5
カクヨムその他連載:4話完結

オフィーリアの残像(原題=メメント・モリ)

訪れなかった死の美しさを想う話、とまとめてしまうと言葉足らずな気がします。その反対側に生きている私、老いていく私が最早動かしようもなくいるからこそ、陰影を帯びる話なのでしょうから。素晴らしかったです。数ある作品の中で、この作品を読ませてくださったことを感謝します。 全体の印象として、「清冽な」作品だと思いました。ストイックなので「清潔な」かなとも思いましたが、想起するのは透明な水の流れだったので、恐らく「清冽な」が近いのでしょう。もう少し言葉に落とすなら、「思ったことはあるかもしれないが、こうは書けない」でしょうか。 死に損なった自分を前提として、美しい死、或いは死の美しさを想うとなると、普通に書いてしまったら自意識とか自己憐憫などの夾雑物が入って淀んでしまいがちなのですけど、この作品はそういう淀みを感じませんでした。十六で死んだ彼女に対して、十八で死ななかった私を見るのですから、自意識が全く無いはずはないのですけど、あるとしても透明に美しかったのだと思います。 「葬儀場にて」は実際のところは彼女の想像ですが、彼の言葉のかたちを取っているので、清潔(こちらは清潔)に読めました。”そういう美しさの幻影を胸に抱いて生きるということは、それ自体がとても美しいと、僕は思いました”と彼のことばというかたちを取るならば頷けます。 全体になんと周到に小説で「私」(作者ということではなく)を書くことの醜さを排しているのだろうかと感じました。もしかしたらもう意識せずにやっていらっしゃるのかもしれませんが。 上手い人に上手いと言っても、もう言われ慣れていらっしゃるかと思いますが、文章自体もああ上手いなあとため息が出るような文章でした。特に「死に損ない」が好きです。クラシカルな品のよさがありました。 拝読できてよかったです。

5.0
  • 作品更新日:2020/11/29
  • 投稿日:2021/10/5
カクヨム青春・ヒューマンドラマ完結非公開

夕望

黒い浴衣でも着ているような文章だなと思いました。以前縋さんとある人の文章について瀟洒ですねという話をしたんですが、縋さんは縋さんで縋十夏の文章をしているなと。黒い少し薄手の光を透す浴衣でも着ているような文章です。それに惚れ惚れとしているのは言うまでもないことかもしれません。 さて、冒頭五行ばかりを読んでこれは最後まで読んでしまうなと思ったのですが、なぜかなと少し考えて。別にとりたてて華やかだったわけでもないのです。「久方振りに筆を執った」ですし。それで読み返して感じたのは少し重みのある落ち着きで、さてと考えてみてヒントは文中にあったなと思いました。 「書きたい物語を書いている人間というのはゴマンといるが、物語に筆を執らされ、書かされている人間というのはどれだけいる事か」 私はその部分を読んでいる時に、「全て大理石の塊の中には予め像が内包されている。彫刻家の仕事はそれを発見する事」というミケランジェロの言葉を想起して、そういうことかもしれないと。小説を書いたことがある人はご存知だと思いますが、物語冒頭なんてやることが沢山あるんです。だけどこの作品はそれを”処理”している感じがなかった。物語が求めているものを自然と書いているような感じがしたんです(実際のところ計算と意図に満ちているのかもしれませんが)。それは――読んでしまうよねと。 全体を読んでみて初読では二つの話がやや分離している印象でした。書き手である彼の話と、頭すら下げることができなくなった彼の話。ただ、その二人の彼が繋がっているのは間違いない。辞書とハードカバーを積み上げ彼岸花の花瓶を置く彼の動きには最初から何か背負うものがあるのですから。それに些か分離して見えるのも当たり前と言えば当たり前なのです。彼は窓を閉めていたはずなので。 ”なぜか”窓が開いているのは文学的ですね。閉めたはずなのに書いている内にいつの間にか半開きになってしまった窓。風が吹いて室内のものを散らす、それだけのことが物語のターニングポイントとして機能しているのは素晴らしいですし、渋くて大変好みです。あの時、落ちて跳ねる万年筆から散るインクの僅かな飛沫や風の姿まで見えた。お見事でした。

5.0
  • 作品更新日:2021/9/15
  • 投稿日:2021/10/5
カクヨム恋愛連載:2話完結

桜の咲く頃、梅は散る

特別いい作品を読むと世界が明るくなったような気がします。 いえ、私も書き手なので嫉妬なり焦りなりは抱えるべきはずのところ、なんだか救われたような気がして。この世界は広くて、こんなに素晴らしい作品があって、だから君はおよそその点において絶望しなくてもいいし、これから往く先君は孤独ではない、と。こんな感慨を持つのは甚だ傲慢ではあるのですが、そう言ってもらえたような気がするのです。 ではこの作品がどう素晴らしいのか、それを語るのはやはり難しくあります。圧倒的な小説の巧さでしょうか、散りばめられていく小さな違和感とその全てを回収する手腕でしょうか、思春期の些か若過ぎる男女の性を生々しさとどうしようもなく匂い立ついい意味での”いやらしさ”をもって描いていることでしょうか、物語の語り手たる主人公が後々まで重要なことを語らぬことによって謎を残しつつ彼の持つ罪悪感を描写していることでしょうか、波留の恐ろしいまでの感情が迫って来るあの圧巻のラストでしょうか、そうして物語を読んだ人間があまりに早く咲く梅を見た時のように、美しいとは思いつつ密かにそして確かに心に不安なものを持たされてしまうことでしょうか。 私はこうして羅列して語れた気にはならないのです。私の好きな作家さんの言うことには、「ある小説を本当に語るためには同じだけの文字数を費やすか、小説を一本書くしかない」ということらしいのですが、果たして私は11,081文字費やしたとしてこの作品を語り得るのでしょうか。恐らく答は「否」であろうと思います。そのことに呆然としつつ、そこまでの作品に出会えたことに得難い幸福感を覚えます。 どうぞ皆さんも読んでくださいと、そう白旗を上げる文言を残して締めといたします。

5.0
  • 作品更新日:2018/3/24
  • 投稿日:2021/10/5
カクヨムミステリー短編完結

えっちゃんへ

多分今までweb小説は1500作くらい読んでますが、こんな怖い作品読んだことがありません。 お化けも幽霊も出てこない、ただ、1通の手紙。 続きを読んではいけないと激しく思うのに、手が止まりません。 前情報は少ない方がいいので、少しでも気になった方は是非。

5.0
  • 作品更新日:2020/6/1
  • 投稿日:2021/10/5
カクヨムその他連載:5話完結

ヒゾウの子ら

情景描写のなんと見事なことでしょうね。 踏切なんて二人を遮る道具として百万回は使われていると思うんですけど、あまりに描写が見事なので魅せられてしまって、陳腐さの欠片もなく「そうあらねば」と思わせられてしまいます。 二次会の後で駅に降りた時の描写も素晴らしいですし。 そして同話終盤の展開。そうなるのは分かっているんです。もう一回それが繰り返された時点でそうするのは分かっている。でもとても胸熱であり、やはり「そう来なくては」でもあります。 心理描写もミニマムなのに冴えていて素敵でした。 ……なんで描写の話ばかりするかってストーリーのネタバレをしたくないからですよ。本編を読んでください。 あの日越えなかった遮断棒、その先を行く人の物語。

5.0
  • 作品更新日:2020/9/19
  • 投稿日:2021/10/5
カクヨム恋愛短編完結

鈴蘭記念日

この「ご飯が美味しそうだったで賞」を受け取ってください……優勝です……。ご飯描写だけで百万点なので、ぜひあのご飯を見るためだけにでも皆様に読んでいただきたいと思っています。空腹時に読んであまりのことに笑みが零れました。 そして美味しいだけじゃなかったという。あのご飯描写には深い意味があったんですね。もちろんお好きだというのもあると思いますが、ご飯が美味しそうなことをこの作品が求めているんです。 それだけでなく全編がそれこそ華奢なガラスの一輪挿しのようで、光を反射して美しい。決してきれいなばかりの話ではないはずなのに、作品を通して光は淀まず、「ああ、きれいだった」とそういう読後感でした。

5.0
  • 作品更新日:2020/8/26
  • 投稿日:2021/10/5