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作:英 凜々花(はなぶさ りりか)

世紀末の境界線

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未評価

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最終更新:2022/3/2

作品紹介

1996年、27歳のコトコは鬱病と性依存から抜け出せない人生に絶望している。自ら命を終えられないコトコは、世間を騒がす『ノストラダムスの予言』に救いを見出し、人類滅亡の1999年に向けて命のカウントダウンを始める。コトコは会社を辞め、部屋を引き払い、なけなしの貯金をはたいてロンドンへ渡る。2年前に失踪した弟がそこにいるという何の根拠もない希望を抱いて。そんなコトコの前に神戸で震災に遭った20歳のミチルが現れる。弟を彷彿とさせるミチルに慕われ、コトコは救われた気持ちになるのだが、それは新たな悲しみのはじまりでもあった。 主な登場人物 ●コトコ 27歳。鬱病と性依存で人間関係が滅茶苦茶になり、東京の会社を辞職。逃げるようにやってきたロンドンで2年前に失踪した弟を探している。 ●ミチル 20歳。神戸出身。美しい容姿で人を魅了するが誰にも心を開かない。コトコを慕ったり突き放したりを繰り返す。 ●ミホ 26歳。福岡出身。「英語をモノにしたいから日本人とはつるまない」が口癖。アランに夢中。 ●ジン 23歳。台湾出身。偏見をすぐに口に出してしまうトラブルメーカー。面倒見が良い一面も。 ●カナ 21歳。京都出身。スノッブな人間に手厳しい毒舌女子。 ●バネッサ 21歳。スペイン出身。ファッションリーダーで人気者。自信に溢れて見えるが性格は繊細。コトコの親友。 ●マリコ 27歳。東京出身。周囲の羨望を集める美女。人望も厚く、アサミにとっては姉のような存在。 ●アサミ 栃木出身の素直で無邪気な21歳。皆を和ませる妹的存在。後半、心が不安定に。 ●ヒナコとクニコ 22歳。震災で受けた心の傷から立ち直るために英国へやってきた神戸出身の親友同士。 ●アラン 23歳。アイルランド出身。弁護士を目指しながら日本人に英語を教える金髪碧眼の美男子。 ●ファビオラ 21歳。ブラジル出身。性に奔放で陽気な女子。バネッサの天敵。 ●タクシ 32歳。生徒から苛めに遭い中学の美術教師を辞めて英国へ。 ●ミサキとエイコ 25歳。神戸出身。シベリア鉄道でロンドンへやってきたLGBTカップル。 ●フセ 25歳。新しいフラットのインテリ住人。コトコに新たな知恵をもたらす。 ●ユリ 41歳。ニューヨーク在住のコトコの従姉。70年代の米国で極貧生活を送った。

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評価・レビュー

苦しい時に思い出したい素敵なラスト

いわゆる毒親に育てられ、職場では横暴な上司に都合よく使われ、自らの行いによって人間関係を破壊してしまい、日本から逃げ出した主人公。失踪した最愛の弟が暮らしているかもしれないロンドンで新たな生活を始めたものの、人生に希望や目的を見出せず、根深いネガティブな考えを捨てられず、死への誘惑が頭をよぎることもある。 もし、この作品がありきたりな物語であれば、主人公は弟と感動的な再会を果たし、両親と和解(もしくは完全に離別)し、運命の恋人と出会い結ばれて、素敵な友達をたくさん作り、自分に自信をつけて、いい感じの再就職先を見つけ、幸せいっぱいの満面の笑顔で日本に帰ったことでしょう。 しかし、私たちが繰り返している日々の暮らしと同じように、主人公の状況は簡単に好転などしないのです。苦しみ、もがき、終わりなき一進一退を続ける地に足のついた筋書きは、まるで誰かの過去の日記を読んでいるようで、主人公と一緒に落ち込んだり、晴れ晴れとした気持ちになったり、また塞ぎ込んでみたり、彼女の日常と心の浮き沈みを存分に味合わせてくれました。 私たちがそうであるように、彼女の心はきっと、これからも浮き沈みを繰り返すことでしょう。けれど、彼女が最後にたどり着いた真理は、これからの彼女の人生を何度となく救うのだと思います。桜の花びらの舞う夜のロンドンを背景に描かれる美しいラストは、解決しようのない何かを抱えている人の心に、きっと響くと思います。

5.0

mu