雪原の野獣

鋭二は腰のホルスターから拳銃を抜いて、爆発で吹き飛ばされて呆然としているソ連兵に向けてたて続けに三発撃った。奥田の形見の拳銃は、何年も前から鋭二の拳銃だったかのように、弾は正確にロシア兵の額を撃ちぬいていた。爆発した弾薬倉庫の中から派手な火花が何度も上がった。弾薬に火がついて次々と誘爆しているのだろう。色丹島の穴間基地は、暗い夜空を真っ赤に染めて燃えていた。（六十六話より。）愛娘・紀子の復讐のため、ついに植田を殺した鋭二は、元陸幕二部の水野の情報で、三雲がいる北海道へと戦いの場を移してゆく。