Raison D'être
最終更新:2023/5/5
作品紹介
静寂に包まれた部屋を、微かな灯りだけが照らす。 手にした燭台の灯火がゆらゆらと揺れる。 照らし出された先にあるのは無数の本たち。 さて、今日はどの物語を読もうか……。 そんなことを考えながら、指先で順々に背表紙をなぞっていく。 そしてふと、視界に映った一冊の本を手に取る。 ……まだ題名も何も書かれてないようだし、作者の名前も掠れていて読み取ることはほぼ不可能……だけどこうして、“ここ”にあるということは、この本もれっきとした物語ということだろうけど……。 ふぅん……よし、今日読むのはこれにするとしようか。 どんな物語なのかは分からない。 ───それでも。 結末を識っている物語を読むよりかは、面白いんじゃないかな? ……なんてことを問いかけたところで、返事が来るわけでもなく。 解っていてもそういうことをしてしまう自分がどこか可笑しく思えて、笑みが零れる。 いやいや、こんなことをしてる場合じゃない……時間の無駄だ、そろそろ読み始めるとしよう。 席に着き、さっそく頁を捲る。 これから始まる物語に、胸躍らせながら─── ───さぁ、今はまだ何も書かれていないこのまっさらな頁に、一体“君”はどんな物語を綴るのかな? -------------------------------------------------------- Page.0「まだ誰も識らない物語」
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