お兄ちゃんみたいな冒険者になりたくて ~無自覚の少女はあまりに強すぎて、うっかり世界を滅ぼしかねない~
最終更新:2021/2/18
作品紹介
【あらすじ】 「ここが憧れの冒険者組合か……」 お兄ちゃんのような冒険者になりたくて、勇気を出して冒険者組合へやってきた。 だけど、こんな非力な少女が冒険者だなんて、みんなは馬鹿にする。 ゴブリン退治の依頼を受け、一級冒険者のライラさんが同行してくれることになった。 ところが二百を超える魔物に囲まれてしまう。 「無理……こんな数……」ライラさんは恐怖する。ん? 演技だよね? あいつら弱そうだし。これは、弱い相手でも油断しちゃいけないという先輩からの教えなのだろう。きっと……。 とりあえず逃げることになった。追ってくる敵を、私は森の木々ごと薙ぎ払う。後ろには五十を超える死体の山ができていた。振り向いたライラさん。目を見開いて固まる。 その間にほかの敵は逃げだしていた。何かに恐れていたようだ。きっと一級冒険者のライラさんに恐怖したのだろう。さすがライラさんです。 帰りに立ち寄った食堂で、ライラさんはなかなか口を開いてくれない。やっとのことで話しかけてくれた。 「どうしてあいつらは逃げてくれたの……」 「ライラさんがあまりに強くて逃げ出したのではないですか?」 「んなわけないでしょ……」 なんだか、ライラさんの視線が痛い。 「それに、あれだけたくさんの数の魔物がいたなんておかしいとは思わないの?」 「初めての依頼だったので、あれが普通だと思っていました」 おばかな子を見るような目でライラさんが見てくる。 どうしてそんな目で私を見るのだろう? だって、私は今日、冒険者になったばかりなんだよ。当たり前の日常だと思うじゃない。 「私たちが逃げ出したでしょ。それで、後ろを振り向いたらたくさんの死体があるし。あれで思考が完全に停止」 「ああ、あれでしたら私が……」 「ん?」 「私が倒して……」 「んん?」 「えっと、まだ今日、冒険者になったばかりですし、あんなことしかできませんが……。一級冒険者ならきっと、もっと凄いんですよね。私はあのくらいしかできませんけど、どうか見捨てないでください!」 ライラさんに見限られないように懇願する。だけど、ライラさんは頭を抱える。あの程度しかできない私に呆れているのだろうか。 これは十四歳にして能力をカンストしてしまった少女フィルのお話。フィルは自分の力に無自覚のまま七級冒険者となる。
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