恋―虎威―わずらい　～人喰い美人と相対し～

空手家の人生に女はいらない――そう考えていたこともあった本間圭介（ほんま　けいすけ）。高校２年生。凄腕の古流空手家。 同級生を傷付けてしまった過去を悔い、その強さを表に出すことはない。 あの女に告白するとトラウマになるらしい――影でそう噂される藤ノ井舞魚（ふじのい　まな）。高校２年生。学校一の美少女で、そのうえ運動神経抜群。 京都出身で今は一人暮らしをしているが、いつだってクラスの中心にいて友達は多い。 本間圭介が藤ノ井舞魚に一目惚れしたきっかけは、本当に些細なものだった。 ――桜舞い散る中で見た彼女がすごく綺麗だったから―― それだけ。元々クラスメイトだったが、話した事なんて片手で数えるほどしかない。 強引すぎる先輩２人に告白を強要されなければ、きっと、恋心を隠したまま卒業を迎えていただろう。 「本間くんがうちの事ちゃんと好いてくれはるんやったら、付き合ってもええよ」 ダメ元の告白は何故か成功し――しかし空手家・本間圭介はまだ知らなかった。 藤ノ井舞魚に告白することが何を意味するのか。 彼女の『獲物』に名乗りを上げることで、何をしなければならなくなるか。 これは血に飢えた虎と向き合った青年の物語。