勇者様は公務員／十一屋翠

　世界を混沌へと導く魔王。そして住民を苦しめる魔物たち。 　弱き民は勇者を求め、一つの場所へ集まる――最寄りの役所へ。 「わだし、勇者様にお会いしたいんですけんど！」 「魔物討伐ですね。でしたらそちらの机の青色の紙に記入した後、５番の窓口に書類をお持ちください」 「住所、氏名、電話番号、職業……相談内容は……魔王さ復活したので勇者様に退治さして欲しい……っと、出来た！」 「お疲れ様です。これで申請完了です。今、担当の勇者を呼びますのでしばらくお待ちくださいね」 　リーンゴーン 「あらあら、もうそんな時間だったのね」 「あのぉ、勇者様は？」 「ごめんなさいねぇ、もう三時だから今日の業務は終わってしまったのよ。予約券出しますから、また明日来てくださいね」 　――これは定時出社・定時帰宅の勇者が、業務時間内で魔王を倒したり人助けをしたりするお話。 ※※　著者紹介　※※ 十一屋翠（じゅういちや・すい） WEBで公開していた『左利きだったから異世界に連れて行かれた』が人気を博し、同タイトルでカドカワＢＯＯＫＳより書籍化デビュー。 『左利きだったから異世界に連れて行かれた』は現在2巻まで刊行中。