かなり前、恐らく8〜9年くらい前に読ませて頂いた作品ですが、今でも心に残っている1作です。
というか、この作者さんの作品は大抵心に残っています。
冒頭から丁寧な描写で、ゆっくりと物語に引き込んでくれます。
語られる雨の国の素朴な生活や人々の描写も興味深かいものでした。
こういう風に、その土地そのものや、そこで生きることの意味をしっかり作品から感じられるところが本当に素敵だなと思います。
それに、何より、仕方なしに生まれていったしきたり、考え方を否定するような結末にならずに、逆にその土地で培われた少年や少女の優しさや強さがラストから感じられて、とても良かったです。
最終的に肯定にも否定にも結論をつけられない主人公の立ち位置も良く、主人公ではなく、主人公を通して「異国の地」を描いているという印象の作品です。
そのおかげで、読み手も偏った見方ではなく、ある種、その多くの風習に敬意を持って読めるのが、いいな、とも思いました。
ラストに垣間見える希望、未来への期待も心地よかったです。
個人的にはイアン君が好きでした。
やさしそうじゃないのにやさしい男の子って、いいなと思います。
読ませていただいたことを感謝したい作品です。
登録:2021/7/18 08:43
更新:2021/7/23 17:15