ディストピアもの。始まりはそんな世界を舞台にした、よくあるSFのボーイミーツガールなのかと思っていた。
……読んで痛感した。間違ってはいないけれど、間違っていた。ボーイミーツガールが発端ではあったけれど、もっと多彩で深い、抉られる物語だった。
引き込まれるけれど、正直なところ、読むのに体力も精神力も必要な物語だと思う。と、同時に、読み終わった後、ずっと忘れられない物語だとも思う。
この物語に最初に出会ったのは、もう随分と昔のことではあるのだけれど、自分が、誰の、どんな立場に同調して読むのかによって、見えるもの・味わいが随分と変わってくる。年を経て読み返すたびに、違って見えることに、驚く。
私がこの物語で何を感じ、どう思ったか、読むたびに変化していくそれら全てを書き記すことは、おそらく無理だ。あまりにも膨大で、時期によって変わり過ぎてしまう。
それでもただひとつ言えることが有るとすれば、作中誰のどんな生き方であろうと、表面に見えるものよりも、きっとずっとその人の人生は深い、とそれだけだ。
これも、なぜWebで無料で読めるのか、いまだにわけがわからない作品の一つ。
登録:2021/7/23 01:01
更新:2021/10/1 13:50