「あなたに呪いをかけましょう」
恋をした男に、その想いを利用され他の男との政略結婚を乞われたルクミシア。
七年後、夫の病死により出戻りさせられた家で使用人として待っていたのは、初恋をしたその男だった。
印象的な呪いの言葉から始まり、徐々に明かされていく七年前の彼女と彼の関係や接し方、彼女の性格や想いなど、現在と過去が繊細に寄り添う物語。
また彼女の狼狽や葛藤など強い感情があることが窺えながらも、直接的な表現ではなく読み手が察するように描かれていることでも、緩やかな切なさの流れる雰囲気の物語です。
恋心を捨て呪いの言葉を与えた彼女の強さと、再会し喜びで震えた恋心を抱える彼女のいじらしさ。
元々仕えていた家を離れ彼はなぜ彼女の前に現れたのか? どのような心情であるのか、あったのか?
二人の関係がどのように紡がれるのか、待ち遠しい作品です。
21年7月現在、6話まで更新されています。
中編ほどの予定で結末までのストーリーは決まっているとの作者様のお言葉があり、応援を込めて紹介させていただきます。
タイトル「エメラルドの呪い」。エメラルドは男の瞳の色です。呪いの言葉を吐いたのは彼女のほう。
一見逆転しているようですが、エメラルドの瞳を持つ男に恋をし人生の選択をした彼女が、呪いを受けたかのように囚われている。
そういう意味であるのか、はたまた異なってくるのか……
エメラルドという美しさを持つ言葉と、呪いというどこか怖さや暗さのある言葉。簡潔でありながら、現在と過去が繊細に寄り添う作品の雰囲気と、おそらく今後の物語を表すに美しく相応しいタイトルに思います。
そんなタイトルをつけることを選択する作者様の、作品への向き合い方、紡がれる内容。好きでたまりません。