悲しさと同時にほっとする、ディストピア短編
移住可能な惑星を探す為に、華々しく見送られた宇宙船。しかし、七十年の間に地球は既に荒廃し、忘れ去られた宇宙船は帰還の際に大破、犬型ロボットだけが生き残る、という悲しい導入。
ロボットは、廃墟で見つけた老婆の願いを聞いて、彼女を映画館に連れていこうとして……。
墜落の衝撃であちこち故障してしまって、バッテリーもギリギリしか残っていないロボット。老婆ももう先が長くない様子、という、悲しい状況の中、次第に因果の糸が解きほぐされていきます。
犬が犬になったのと、地球からの通信が途絶えたのは、どちらが先だったのだろうか、とか。
かつて、彼の人が恋人を顧みずに仕事に没頭したのは、仲間に対する対抗意識もあったんじゃないだろうか、とか。
読み終えた後も、ぐるぐると考えてしまいます。
上質な映画のような、ドラマティックな短編小説でした。