ずっと歯車の音が聞こえてくるからこそ、逆に静けさを感じる世界と、蒸気機関の登場によって傾いていく国の翳りで、どこか閑寂とした雰囲気が醸し出されている作品です。
主人公である琥珀姫ことヤンターは、そんな斜陽の国の王女。外出を許されない籠の鳥でありながら、将来を冷静に見据える彼女の凛々しくも儚い姿が美しく、だからこそ、後半の痛ましさや切なさに胸を打たれます。オルゴールの奏でる音色がだんだんゆっくりになっていき、最後には曲の途中で止まってしまった時のような物寂しさ、物悲しさを深く感じる作品でした。
また、タイトルにもあるように「滅びの美学」という言葉がふさわしい作品なのですが、ちらりと見える魅力的な機械の動きの描写にも注目してほしいです。
登録:2021/8/14 10:41
更新:2021/8/14 10:41