貧しい祖国のために『美しく従順な王妃』として生きる重圧は、一人の少女を変えてしまいました。
これは王妃の『苦悩に満ちた半生』を追う物語です。
全19話(約5.5万字)の中で、王妃と白雪の日々が丁寧に描かれた『義理の親子百合』作品です。
作品名もさることながら「あらすじ」から「あとがき」まで含めて、一つの世界観が作られています。
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義理の母娘となった二人は、姉妹のように仲良く過ごしていました。
一緒に食事をして、ドレスを選び、髪を梳かす。
けれど年月を経るごとに『自分よりも美しくなる白雪』に対する恐怖心が芽生えます。
なぜあんなにも可愛らしいと思っていた白雪を、その手で殺そうとしたのか。
祖国への愛ゆえに心を殺す王妃。
幼い頃から恋憧れる白雪の、静かに歪みゆく愛。
お互いに持つ『愛情の種類』が異なり、思い出の一つひとつが美しいからこそ、現実は惨たらしい。
ともに過ごした、かけがえのない時間。
幼少期から美しい王妃を見て育った白雪の愛情は、大人になるにつれてどんどんと膨らんでいきます。
そして七人の小人たちの言葉は『人間の価値観』ではないからグッとくるものがあり、白雪の歪みが際立ちました。
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本文はやや読点が多めですが、私は『絵本の読み聞かせ』をしてもらっているような独特のテンポだと思ったので、すぐにノッて読み切ってしまいました。
それに童話「白雪姫」を『義理の親子百合』として見ると、こんなにも自分の嗜好に刺さるものになるとは思いませんでした。
葛藤する王妃と、まっすぐな愛を向ける白雪の関係性がとても好きな作品です。
個人的な好みにバッチリどストライクで、読後はしばらくこの世界観に浸っていました。
百合はよいものです……。
登録:2021/8/18 19:16
更新:2021/8/18 19:16