「あ、これ、引きずり込まれるやつだ!」
最初の一行を読んだだけでそう思わせられる作品が、カクヨムにはちょくちょく有るのですが。
この御作品もそんなとんでもない引力を持つ一つ。これは紙の本の匂い、紙の本の手触りだ、と一行目を目に入れた瞬間に思い、二行目に移る頃には作品世界に引き込まれていました。
いえ、引き込まれたというよりは、作品世界のホワイトアウトの中に「居た」という方が、体感としては正しい。文字を読んでいるという感覚を忘れ、その世界で確かに主人公と同じ数時間を過ごしたのです、実際にはわずか数千字の物語をたどったに過ぎないのに!
描写に全振りに近い力の入れ方をされている作品ですので、エンタメ的な波瀾万丈さはありません。ですが、一時、ここではない別の世界に連れて行かれる。そういう強度の有る物語を好まれる方に読まれて欲しい作品です。
登録:2021/9/7 18:24
更新:2021/9/8 01:27