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憎しみの連鎖が招いた暗闇の中に、一筋の光が差し込む人間ドラマ

5.0
1

 二つの国が血で血を洗う戦いを繰り広げた帝共戦争。その中で、帝国人から犯された現地女性から生まれた主人公、ユリンは、村の人々を虐殺した敵の子として虐げられる日々を送っていた。

 彼女は、自身の穢れた血を洗うため、顔も名前も知らない父を探し出して、殺すことを決意するのですが──。

 

『戦争の悲惨さ』

『いじめ』

『国家間の賠償問題』

 本作のテーマは非常に重いのですが、真向勝負で表現しています。

 

 物語がたどる結末は、復讐の成功か、失敗か。いずれにしても、主人公には罪人となる未来しかありません。

 ですが、憎しみの連鎖が生み出したどん底の中に、一筋の光が差し込むのです。

 そこから訪れる展開に胸を打たれ、久々にウェブ小説で温かい涙を流すことができました。

 人間が本来持っているはずの「優しさ」が、重いテーマの中垣間見えるヒューマンドラマ。

 結末はぜひあなたの目で、確認してください。

木立花音(こだちかのん)

登録:2021/10/8 22:49

更新:2021/10/8 22:49

こちらは木立花音(こだちかのん)さんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

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