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コミカルな現代ファンタジーだと思った? ざーんねん。

5.0
1

 ベッドから落ちたと思い目が覚めると、主人公は、見知らぬ森の中に居た……。これは夢か幻か? 頬をつねっても記憶がない。

 突然警告音を奏でるスマートフォン。襲って来るモンスターと救出に現れた女性との出会い。スマホには『LAND』という覚えのないアプリが何時の間にかインストールされていて? 

 現代日本のようで、いや、しかしちょっと違う。そんな不思議なゲーム世界に突如迷い込んでしまった主人公アキラが、続けて襲ってきたゴブリンから自分を逃がすために犠牲になった親友、トシヤと別れるという衝撃的なシーンで物語の幕は開けます。


 つまりこれは、シリアス寄りの現代ファンタジー? それとも、VRMMO寄りのSF? といった第一印象を受けますが、ご安心ください。意外にも? コメディタッチで物語は進行していきます。

 そんな本作の魅力であり特徴は、個性的な登場人物、でしょうか。

 例えば……。


 何故か服を着ていない、当然の如く大切な何かをブラさげた格好の老人、そらじじい。 ※いや、せめて穿けよ。

 主人公の顔を見て、意味深に顔を赤らめる月影。 ※男性です。むろん、主人公も。

 愛すべきもふもふ、不思議生物のうさぴょん。 ※兎なの? 人間なの? 兎人間なの?


 登場人物だけではありません、怒濤の勢いで押し寄せてくる「お約束」の数々に、否が応でもクスリとさせられてしまうことでしょう。


 が、ギャグ小説だと油断してはいけません。

 基本コミカル時々シリアスで進行していく物語は、中盤以降に本性を現します。

 何故、主人公は、こんなゲームのような世界に迷い込んでしまったのか?

 何故、こんな、ゲームのような世界が存在しているのか?

 そもそも、主人公は”何者”なのか?


 段階的に明かされていく真相に、思わず「うわ、意外とすげーな (失礼)」と堪らず唸ってしまいました。

 なんでしょうね。プロットを作ることの大切さを、教えられた心地でした。


 オススメできるターゲット層は、現代ファンタジーが好きな方と、ラブコメが好きな方、でしょうか? やや会話文多めのライトノベル風味な上に一エピソードの文字数が実に適切なので、ごく自然にページを捲っていくことができる思います。


 完結した今こそ、本作の良さに触れる時。最後はちょっとビター風味ながら、清々しい気持ちで結末の余韻に浸れることでしょう。

 気になりましたら、お手に取って頂けると幸いです。

木立花音(こだちかのん)

登録:2021/11/11 21:15

更新:2021/11/11 21:15

こちらは木立花音(こだちかのん)さんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

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木立花音(こだちかのん)