春樹と夏美。秋の終わりに、仰向けになって18歳の男女が青空を眺めている。春に結婚した二人は春から秋までの間を、共に生まれて初めての農作業をしながら過ごした。長い冬を乗り越えるためには、何よりも食料の確保が大切だからだ。
さて、ということでネタバレありきの感想になるわけですが、でも、そもそもこの作品はできるだけ事前の情報を遮断して読んだほうが、展開の驚きを楽しめると思うので、もし未読でここまで読んでいる方がいるのなら、ぜひ作品のほうへと戻っていただきたいものです。
では、準備は良いですか?
中盤以降、この作品の舞台は人類が居住できる地球外天体、準惑星Ellipsisという場所で、二人が地球を救う鉱物資源を採るための植民者であることが明かされます。短い1年程度の春夏秋、約60年という永遠の夜にも似た冬。身近に迫る、冬、は私たちが知っているような気軽なものではなく、言葉通り、どこまでも果てしなく続いている。そんな冬の到来を待ちながらコバルトブルーの空に込めた願いとともに、物語は幕を閉じます。
読者はその結末の余韻から一文目に戻って、いつか二人にまた訪れる青空を信じたくなるのかもしれません。描写は簡潔ながらも、詩情を感じて、とても琴線に触れる作品でした。
登録:2021/11/14 01:36
更新:2021/11/14 01:35