何も考えずに読める、なろう系コメディ小説の一作。
ライトノベル好きならスラスラ読めるテンポのいい文章で、作風にも槻影風とでもいうべきか作者個人のオリジナリティがある。多作な方だが、どの作品を読んでも「ああ、あの人が書いたのか」と分かる感じ。ただその分キャラクターや展開が全て似通っていて、特に主人公が大体同じタイプで、有能(?)な無気力系ばかりな印象。その代わり一定以上の面白さは担保されているので、安心して読める作家さんだと思う。
「嘆きの亡霊」は長期連載中の作品で、最初の1章2章あたりは特にテンポもよくて面白い。
ハンターなら誰もが一目置くパーティー「嘆きの亡霊」のリーダーで、知らぬ者のない二つ名持ちでありながら謎多きハンターである主人公が、実は最弱ハンターで「引退したい」が口癖…という勘違いコメディ。
主人公がテキトー言ったことが意味深にとられて最終的に全ての出来事が主人公の掌の上で転がされていたみたいに受け取られ全知全能扱いされて、1人意味の分かっていない主人公は「うんうん、そうだね」とテキトーに相槌をうつ…といったストーリー。主人公のパーティーメンバーもなかなか登場せず、チラチラと匂わせだけされて先の展開への布石としているのも上手い。
ただ章が進むにつれてテンポが悪く話がなかなか進まないので冗長さがキツくなってくる。しかも話の畳み方が無理矢理に過ぎる。特に伏線を敷いて回収するということもなく、問題を全て解決する人や物や現象が現れて丸く収まり、それらは全て主人公の掌の上だったと周囲が勘違いするという「デウス・エクス・マキナ」状態。勘違いコメディなら伏線や布石を敷いてピタゴラスイッチ的に展開が繋がっていかないと面白くない。問題が解決してもカタルシスが得られず、「あの話読み飛ばしても大丈夫じゃん」と気付くと中弛みを感じて疲れてしまった。
書籍化漫画化しているのでそれに合わせて文字数や展開を調整しているのかもしれないが、引き延ばし感が強いので連載を追いかけるとしんどいと思う。貯めて読むとか、何も考えずにサラサラっと読む分には面白いと思う。
登録:2022/1/3 20:42
更新:2022/1/3 19:18