本作はタイトルだけ見ると、ありきたりなテンプレ追放ファンタジーに見えるが、その中身は全くの別物だ。
一言で表すなら、百合グロファンタジーと言ったところだろうか。
タイトルにもある通り、最初は主人公が追放される所から始まるのだが、とにかく悲惨かつ不気味な展開が続く。彼女たちは何か、得体の知れない者たちに襲われ続けるのだ。
タイトルの「王都で気ままに暮らしたい」という願望は、決してほのぼのとした曖昧な願望ではなく、主人公たちの絶望から生まれた悲痛な叫びそのものである。
ただ、そんな中でも主人公とその相棒の奴隷少女は愛し合う。互いの内にある絶望を誤魔化すように、或いは互いの傷を舐め合うように愛し合う。
そんな一時の癒しの光景は、目の前に広がる絶望から目を背けようとする読者を引き留めさせるほど美しい。
本作は完結済みのため、このレビューを見てくれた方は、一体どのような絶望が広がっていたのか。絶望の末に何が待っていたのか、是非自分の目で読んで確かめてもらいたい。
百合というだけで敬遠するには、余りにも勿体ないダークファンタジーの傑作だ。
登録:2021/7/11 15:36
更新:2021/7/23 17:15