まずこの作品における『勇者』とは、最大最悪の罪を犯したものに科される懲罰である。
主人公もその仲間たちも、その懲罰を背負うも当然の罪人であり、
誰も彼もが恐るべき罪を言動から覗かせ、あるいは現在進行系で犯し続けている存在だ。
そんな勇者たちに科される任務は、世界を侵食し続ける『魔王現象』の撃退。
かくして、勇者と魔王は相対することになる。
ただ目の前の魔王に抗い、それを倒すために戦う。
たとえ死んでも蘇らせられ、再び最悪の戦場へと送られる。
戦い続けることそのものが罰。それが勇者刑。
主人公ザイロはその中でも特級の『女神殺し』の罪を背負う勇者。
彼の根底を支えるものは『怒り』であり、それは自分自身と、世界に向けられたものだ。
その怒りでもって彼は誰かを救うために死地に飛び込み、
魔王に対して無謀ともさえ思える突撃を繰り返す。
そしてそんなザイロの元に、新たな『女神』テオリッタが現れる。
彼女と契約し、ザイロは再び女神の騎士として戦場を駆け巡る。
最悪の犯罪者『勇者』たちによる、最強の魔王討伐劇。
過去を失い、今を縛られ、未来には絶望しか残らない。
それでも彼らの生き様は不思議な熱を帯びている。
まさに痛快ダークファンタジーと呼ぶにふさわしい傑作である。
登録:2021/7/11 22:10
更新:2021/7/23 17:15