シェイクスピアはその戯曲『ハムレット』の中で、
「芝居というものは、昔もいまも、いわば自然に対して鏡をかかげ、善はその美点を、悪はその愚かさを示し、時代の様相をあるがままにくっきりと映し出すことを目指しているのだ」
と語った。
幻想再帰のアリュージョニストは異世界転生ものではあるが、その物語は単なる空想活劇ではない。
この物語を支えるのは、徹底したリアリズムだ。
作者の最近氏の該博な知識と、圧倒的な文章力によって描き出されるアリュージョニストの世界を支配するのは、呪術という異界のシステムである。
だが、この呪術を通して明らかになるのは、普遍的な人と社会の営みだ。
この物語で描かれる世界と人間は、そのタイトルの通り私達の現実世界の引喩(アリュージョン)なのである。
シェイクスピアが語ったように、鏡のようにくっきりと読者である私達の時代の様相を映し出す。
この最高の思弁小説をどうぞ御一読あれ。
登録:2021/7/10 01:02
更新:2021/7/23 17:15