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ジャンル:ファンタジー

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【完結済】ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します~

最強可愛い美味い伏線増し増しモフストーリー

 リリアンはお名前の通り、可愛い狼獣人なのです。黒毛で、ケモ耳ぴょこぴょこ、しっぽフサフサぱたんぱたんの、15歳になりたて冒険者。しかも最強。  『樫の木亭』でバイトしててみんなから可愛いがられてる15歳、だけど最強。  最強なのです。  しかもカッコいい!  理由があります。それは前世の記憶があり、前世が最強だったからです────では終わらない。  前世の記憶があっても、そのままで強くなれるような世界じゃないのです。  彼女は幼い頃からちゃんと努力して、人間種だった前世と違う、狼獣人に生まれたことも活かせるように自分を鍛えてきたのです。真面目ですね、良い子です。性格も素直な、でも最強なのです。(ちなみに内緒なんですけど、前世は震えるような美女なんですヨ)  彼女のまわりには、あたたかいメンツが揃っています。環境もわりと最強です。読み進めていくと分かりますが、今自分が生活しているところにも、美味しい料理と心地よい人間関係、そして強いイケメンがいます。  実家も出てきますが、素晴らしい兄弟と強いイケメンがいます。  前世からのご縁も最強です。強いイケメンもいますが、可愛いモフモフもいます。最つよです。  恋の行方にもヤキモキさせられます!  特にデニス! そう、キミだよキミ!  リリアンも、前世のせいなの? と悩んだりして、どうなるか分からないところ、目が離せません!  ところでこの世界は、冒険者がギルドに所属し、レベルに合った難易度の依頼を受け、ついでに狩ったモンスターを美味しくいただく世界です。それがまた、もう、ワシにも……ワシにも一つくれ……いやひとかけらでいいからあ! という、ひどい、いや、羨ましい世界なのです。そういう美味しい世界に、投げ込まれる文明の利器、スマホ。スマホとは書いていないけどそれはどう読んでもスマホ、しかも実は日本も関係してるみたい……!  謎です。一気に深まる謎、気になります! リリアンの前世、そして国の成り立ちまで絡んだ巨大な謎に立ち向かう、これからクライマックスです!  一緒に堪能しませんか? (終わりへの旅 120 『サポーター』/ニール(3)まで読ませていただきました)

5.0
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メロウ+

蒼き月夜に来たる

この世界を主人公と共に旅しよう。彼との距離を見つめながら。

 神隠しにあった人達はもしかして、異世界に行ってしまった? そう、蒼い月に導かれて……等と思ってしまうほど、リアリティ溢れる世界が描き出されている作品です。ここには確かに、もう一つの世界があると。  剣と魔法の世界に、何故だか日本の文化のエッセンスが僅かながらも散りばめられていて、この世界と元の世界に繋がりを感じ、それがまた現実感を高めます。  この身近な要素の存在と元来の性格のおかげで、主人公ユエはものすごく馴染むのが早い。  この世界でたくましく生きていく彼女の日々と、最初に出会ったカエルレウムという青年との恋愛が主軸ですが、この彼には何か秘密があるようで二人は手をつなぐまでもかなりの時間を要します。物語が進むにつれ距離感は変化し、同時に彼の秘密も明らかになっていくという盛り上がりは必見。    その他の登場人物も大変魅力的で、個性や過去などの人物像にも深みがあり、ユエと彼らの関わりのエピソードも大変面白いです。  とにかく主人公ユエの性格が、カラっとした元気さと、裏表のない爽やかさ、芯のある意思の強さと明るい性格が気持ちよくて、とても好感度が高い! ずっと応援したくなる子です。  どのエピソードも読後感が良く、1話がやや長めではありますが、どんどん読み進められます。おすすめ!

5.0
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MACK

シャイニングバスター高校の超常的日常 ~ハッピーエンド篇~

エンドするまでもなくハッピーな世界

 シャイニングバスター高校を舞台に繰り広げられる、キス魔の少女とその標的となった少女の、とある放課後のひと騒動の物語。  百合コメディ、それも嵐のようなテンションで一気に持っていくお話です。というか、テンションです。テンションそのもの。いやタイトルと紹介文(あらすじ)の時点でうっすら予感はしていたのですけれど、想像以上の暴風雨が目の前を突き抜けていきました。おおおおなんですのこのとてつもない勢いは……。  いや本当にただ「楽しかった」とか「笑いながら読みました」とか、そういう主観的な感想でしか言い表せません。というのもこの作品、たぶん相当に説明が難しいタイプのお話で、きっと何を言っても野暮になってしまうところがある。基本的にコメディ作品って、真面目に説明しようとすればするほど、いわゆる「ボケ殺し」か「ハードル上げ」になってしまう面があるので……。  というわけで、ここから先はあくまで軽い気持ちで読み流して欲しいのですけれど、とにかくすごい熱量でした。いわゆる不条理コメディ、あるいはスラップスティックと呼ばれる種類のお話。一見、とにかくはちゃめちゃなお話のように見えるのですけれど、実はその荒唐無稽さはほとんど設定面に起因していて、お話の筋それ自体はそこまでめちゃくちゃでもない……とは言い切れないのですけれど(結局設定の面が強すぎて行動に波及してくる)、でも軸そのものはきっちり百合してるんです。  主人公を追いかけ回すキス魔の少女、フニャニャペさん。文化や習慣の違い、ある種のディスコミューケーションが産んだ悲しきモンスター。ハリケーン級の大災害として描かれる彼女は、でも実際にはなんの変哲もないひとりの純粋な恋する少女でしかないと、そう言い切ってしまうにはやっぱり被害が大きすぎるのですが、でも感動しました。  終盤のクライマックス、謎の感動と言ったら失礼なんですけど(謎ではないので)、でもあまりにも素直で真っ直ぐな愛の告白! そしてその後の展開も含めて、結構しっかり恋の物語している。それも見事なハッピーエンドで、全体的に明るく前向きな作品だということもあって、読後はもう大変な爽快感がありました。  と、ここまで書いてきてやっぱり「余計なこと言わなきゃよかった」と思うのは、こう書いてしまうとどうしても違うんです。そこを期待して読んで欲しいわけじゃない。ただ流れに身を任せるように読んで、ただ結果として残るのはとても前向きなものなはずですよと、そのくらいに受け取って欲しい感じ。この作品の主軸はやっぱりコメディで、勢いと不条理感、弾けるような強さが魅力の作品です。とても楽しい物語でした。最後の二行が大好きです。そんな終わりかたって!

5.0
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和田島イサキ

恋の話

空想のような景色だからこそ浮き彫りにされる恋の実体

 天高く恋に浮かれる『私』と、はるか奈落の恋に落ちる『友人』の、恋のお話。  タイトルの通り恋のお話です。ジャンルは「現代ファンタジー」となっており、確かに間違いではないのですけれど、でもそう聞いてパッと思い浮かぶであろうものとはだいぶ手触りが違う作品。おそらくはタグの「言葉遊び」というのが発想の起点となっているというか、ある種の比喩的な心象風景の描写みたいなものが、そのまま物理法則として成り立ってしまう世界の物語です。  圧巻でした。それ以外に言葉が浮かんでこない……まずもって冒頭二行の言い切りがすでに強い。恋に浮かれるものと落ちるもの。さらにそこから意味段落全体(というか『だから私は〜〜』の行まで)を読めば、もうだいたい世界に取り込まれてしまう。この説得力。言葉遊びの巧みさや発想の美しさもあるのですけれど、単純に文章力がすごいんですよね。言い回しの妙に独特の節回し。一文一文に小さなフックがあって、ただ読んでいるだけでいちいち楽しくなってしまう文章。それが内容としっかり噛み合って(あるいはこの内容だからこの文章なのか)、引きつけられるみたいにグイグイ読まされてしまいました。なにこれすごい。  心象風景が物理法則を上書きするような、ある種不思議な世界を描き出しているのですけれど、でも書かれているもの/こと/人は、あくまで現実そのものであるところがとても好き。主人公である『私』やその『友人』は、別にわたしたちと全然違う世界に住む何者かではなく、むしろ常識や価値観をそのまま共有できる存在なんです。最初に言った「だいぶ手触りが」というのはこのことで、単純に現象だけ見ればファンタジーなのですけれど、でも読んで受け取ることのできる実感や味わいは完全に現代ドラマのそれ。この時点でもうだいぶやばいことになっているというか、これを成立させてしまっている時点でもう勝ちだと思います。こんなの面白くないわけがない。  内容、というかお話の筋というか、書かれているもの自体も最高でした。恋の話。ここまで主人公の主観に沿った形で描かれているのに、その熱情や感傷の上にしか成り立たないものであるのに、くっきり疑いようもない形で恋そのものを切り出している。  急におかしなことを言うというかこの先は完全な持論なんですけど、恋というのは元来その当事者にしか知覚できないもので、故に他者が(読者という立場であれ)それを物語を通じて実感するには、どうしても〝その人の恋〟という形にならざるを得ない部分があると思うのです。〝恋をしている誰か〟を通じて想像するもの。が、しかしこの作品は全然そんな感じがしないというか、なんだか手を伸ばせば掴めそうな形で『普遍的な恋そのもの』を描き出しているような感覚。いや自分でもなに言ってるかわからなくなってきたんですけど、でもこれ形が見えません? 単に『私』や『友人』への共感(同化)のさせ方がうまいってだけではない気がするんですよね。  満喫しました。最後のハッピーエンドなんかもう言葉が出ないくらい。本当にタイトル通り、まさに恋そのもののを目の前に削り出してみせた、心はずむ冒険のドラマでした。面白かったです。

5.0
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和田島イサキ

終わりのその先に

ど直球の異世界転生、その〝裏面〟

 異世界に転生した高校生四人組が、魔王を倒し大団円を迎えた瞬間、案内役の精霊に意外な真実を告白されるところから始まる物語。  異世界転生もののファンタジーです。あるいはその雛形なり構文なりを使ったショートショート、と、ストーリーだけを見るならそのようにも読めるお話。でもやっぱり本筋としてはゴリゴリの異世界転生というか、まんまファンタジーだと思います。現実の現代社会ではない、空想上の『ここではないどこか』を組み上げるための作品。  微に入り細を穿つ設定の数々。分量のうちの大半が細かな設定の描写に終始しており、おかげでディティールはすぐに掴めます。平たくいうなら古典的なゲームのような世界。剣と魔法と魔王はいいとして、スキルやステータスというものが普通に存在しており、なにより「こちらの世界」と「元の世界」がはっきり認識されていること。第一話、仔細に並べられた四人のプロフィールは、そのまま物語舞台の説明でもあって、とにかく設定がてんこ盛りでした。  この先はネタバレを含みます。わりと大事なところに触れてしまっているので、未読の方はご注意ください。  お話の筋そのものは至ってシンプル、というか実質的にかなり簡潔なもので、主人公の高校生四人と、もうひとりの友情の物語です。もともとあちら側の存在である案内役の精霊。主人公らを元の世界に帰すための狂言を、でも主人公らは嘘であると看破し、そして再び〝裏面〟の冒険の旅へ、というストーリー。つまりタイトルに偽りなし、終幕の先を描いたお話です。  精霊のついた嘘と、そしてその意図を察しながらも助けに戻ってきた主人公たち。彼らの勇気と友情の大きさが伝わる、堂々とした冒険の物語でした。

5.0
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和田島イサキ

インク瓶に金魚は泳ぐ

異形のいる日本の原風景

 頭部の形状が空っぽのインク瓶である『私』が、電車でちょっと居眠りした隙に、その頭に生きた金魚を入れられて困り果てるお話。  ファンタジーです。現代日本を舞台にしたローファンタジーで、異能や異形がもりもり登場するのですが、でもアクション的な派手さはないタイプの物語。  特筆すべきはやはり設定面の豪華さ、「付喪神(異形頭)」「幻想師」などの設定の独特さです。ファンタジーならではの、そしてアクの強い不思議を用意した上で、でも描かれているのはあくまで日常の小さな事件。これだけの存在を配置しながら、でも戦いや惨劇のようなものがどこにもない、その平和さがとても魅力的でした。  厳密には平和であることそのものではなく、平和なお話だからこそクローズアップされる(できる)物事。ちょっと語弊のある表現かもしれないのですが、描き出される情景やそこに出てくる道具立ての、その外連味がもう気持ちいくらいバシバシ趣味に刺さるんです。この辺もう冒頭から全開なのでわかりやすいと思うのですけれど、花火大会に夏の終わりのお祭り、その描き出す情景からどんどん滲む、この胸の奥がキューってなるような郷愁の念! ノスタルジーというのかセンチメンタルというのか、とにかくたまらないものがありました。味付けの巧みさはもとより、その方向性がはっきりしているような感覚。  お話の筋は非常にストレートというか、金魚の元の持ち主(=勝手にインク瓶の中に入れた犯人)を見つけるお話です。とはいえミステリ的な犯人探しではなく、どちらかと言えば『私』自身の変化を描いたドラマであると思います。面白いのはこのお話の連作的な雰囲気、というか実質的な主人公が『幻想師』(=『私』が相談を持ちかけた相手)の方であるところ。  インク瓶の付喪神である『私』は、あくまで視点保持者、言えても「この事件の当事者」という意味においての主人公です。探偵ものに例えるなら、探偵役は『幻想師』、『私』は依頼者と助手を兼任するような感じ。つまり活躍を見せるのは『幻想師』の方で、そして好きなのは「でも本作はあくまで『私』の物語である」という点。  この先はネタバレを含みます。  『私』の持つ役回り。派手な活躍はなくとも、でも彼の担う変化や成長といった部分、つまり物語の主題がとても好きです。もともとが空っぽのインク瓶、それも主人を亡くしてなお在り続ける付喪神。本文から引くなら「なぜ私はいまだにこうして姿を保ち続けているのであろうか」という疑問、つまり存在意義の喪失に対して、でもその隙間を埋めるように満たされた答え。いや金魚そのものは始まってすぐ投入されているのですけれど、でもただの『不可解な事件』でしかなかったそれが、彼を満たす答えになること。とても素直で、なにより真っ直ぐなテーマ性を持った、不思議ながらも実直な物語でした。

5.0
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和田島イサキ

インリド

「百合とは何か」という問いに対するひとつの正解

 田舎の村に住むようになって百年超、不意に体調を崩したエルフのインリドが、老齢の女性医師ヨハンナの診察を受けるところから始まる物語。  百合です。エルフの存在する異世界を舞台にした、日々の生活と回想のお話。できることならただ「よかった」と、そのひとことで済ませてしまいたいくらい。綺麗で、静かで、でも深く胸を打つ作品です。  驚いたのは、というか何よりも好きなのは、このお話が本当に「百合」としか表現できないところ。  インリドとヨハンナ、このふたりの女性の関係性を、もっとも適切に形容しうる言葉は何か。少なくとも「恋」ほど甘くも切なくもなく、「友情」というには深く穏やかすぎて、「絆」なんて語では何も言っていないに等しい。あるいは「愛」なら間違いではないのかもしれないけれど、でも熱く燃えるような性愛のそれとは正反対で、なのに博愛では決してない。  翻訳のできない何か。故に「百合」という、ある種曖昧な共通認識のもとにのみ成り立つ、そして定義の辺縁を綺麗に断ち切ってしまわない運用をされる語の、その範疇だけに含まれる——というのを前提として。  その芯に限りなく近い部分を、ぴったり撃ち抜いてくるかのような作品。  というのもこのお話、いやこう書くと語のインパクトが強すぎて作品のイメージを棄損しそうで言いにくいのですけれど、「老齢同士の百合」なんです。  片一方(主人公の方)はエルフなので絵面的には若々しいのですけれど、でも老いの度合いで言えば(実年齢でなく、人間に置き換えても)むしろこちらが上。もう一方は現役のお医者さんで、でも六十歳前後の人間なので見た目は結構おばあちゃん。こう書くとどう考えてもキワモノっぽく見えてしまって困るのですけれど、でも実際は全然飛び道具でも捻った話でもなく、しっかりお年寄りしてるのに王道かつ高濃度の百合そのもので、もうこればっかりは「読んでみて! 本当だから!」以外に言葉がありません。どう説明しろっていうの!  以下はネタバレを含みます。というか、これだけだと実質ただジャンルを説明したにすぎないため、もう少し内容に踏み込んだ話をさせてください。 〈   以下ネタバレ注意!   〉  本作はいわゆる異類婚姻譚、というか種族の差による寿命の差を題材にしており、つまりは「死別」を描いたお話です。  ただ、先立つ方が一般的なそれとは逆で、つまりアプローチが逆転しているところもあるのですが(そしてそうでなければ描けないものが詰まっているのが魅力なのですが)、いずれにせよ言えることとして、このお話の行き着く先には『死』があるわけです。  避けようのない終点、老いによる「終わり」の物語。見送ってきた側がそちらに立つことで見えてくるもの、あるいは長命なはずの存在でさえ逃れられないという現実、等々、意味や意義はもう山ほど詰まっているのですが。  しかしそれ以上に胸に突き刺さるのは、それを〝自ずから読み解かせてしまう〟力。  死という終わりがあって、そこに対する恐怖がある。あることがはっきりわかるのだけれど、でも書かれてはいない。最期の瞬間を描かないのはもとより、恐れという感情すらたった一行、終盤手前に独白として置いてあるだけ。  書かれていないものが読める、というか、書いてないからこそわからされてしまうこと。その先やその奥を自発的に考えさせられてしまうような、なにか物語性の力学のようなものを巧みに使った、きっと小説だからこそ可能な情緒の揺さぶり方!  最高でした。きっと文字媒体でなければ描き表し得ないお話。  心の底から「ストーリーを摂取してる」と実感できる、本当に素敵な物語でした。面白かったです。

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和田島イサキ

余りものの音節

幸福でなかった終わりと、終わることのない幸福と

 不死の特性を持つ吸血鬼ふたりが、家で共に食卓を囲むお話。  歴史の影に生きる吸血鬼の姿を描いたローファンタジー、あるいはある種の『if』を描いたSFです。が、その辺(区分けとしてのジャンル名)は正直どうでもいいというか、もしこの作品をひとことで紹介するのであれば、もっと別の単語を探したいような印象。ちょうどいい言葉が見つからなくて困るのですけれど、それでも無理矢理形容するのであれば、「人間の機微、心の細やかな有り様を描いた物語」というのが一番直観に近いかもしれません。というか、そこが好き。  面白かったです。とてもよかったのですけれど、でもどうしよう本当に言葉にできない……とりあえずぱっと見てわかることとして、文章の感覚がとても好きです。簡潔でわかりやすいのに情緒的というか、視点保持者の心情をその手触りごと活写したかのような一人称体。語り口だけでなく物事の切り取り方まで含めて、文章・文体そのものに人柄やその時々の感情を重ねる、この文章のウエットな感触が本当にたまらん感じでした。一文、あるいは一語から読み取れるものの多さ。  全体の構成は少し風変わりで、ふたりの主人公それぞれの視点を、各話ごとに交互に行き来する形で書かれています。なんならストーリーそのものも主人公ごとに別々と考えてもいいくらい。ただそこで生きてくるのが先述の文章の魅力で、書き分け、という言い方が正しいかどうかはわからないのですが(なにしろリズム自体は一緒というか、抵抗になるようなデコボコ感はない)、でも描かれているものの質感の違いにびっくりしました。  例えば男性の方(『おれ』)。淡々と、客観的な事実をただ並べる形で語られる物事。そしてその多くがこれまで歩いてきた足跡、すなわち過ぎ去った過去の物語であること。  そしてもうひとりの女性(『わたし』)。描かれるものは主に現在で、その先に見ているものもどちらかといえば、『わたし』や『貴方』の内側に存在している何かであること。  ずっと終わることができなかった人と、きっと終われないこの先について思う人。同じ不死の悩みを抱えながらも、まるで見ているものが違うふたり。互いの関係性の中にどうにもできない〝何か〟を抱えながらも、でもこの先も永久に共にあり続けるであろう/あり続けざるを得ないふたりの、この、こう、なんというか、あれです。何か。いやすみませんだってなんて呼べばいいのこの気持ち……ちょっとそう簡単には言い換えることができない、そういうものをこちらに投げつけてくれるお話は、間違いなく素晴らしいものだと断言できます。  特にそれが顕著(というか濃厚?)だったのが、やはり最終話である『幸福ぬ・終わら(終わらぬ幸福)』。この辺もうものすごく読み取れるものが多いというか、読んでいてビリビリ伝わってくるものがあるのに、でもそれを安易に「わかる」とは言いたくないところが本当に大好き。仮に自分なんぞがわかってしまったら、つまり吸血鬼でもなんでもない自分の理解の射程内にそれを翻訳してしまったら、その瞬間に魅力だけが一気に色褪せてしまいそうな恐れ。  感想にしてしまうのがもったいなく、何かを語るのもおこがましい。まるで大事な宝物のような「良い」を与えてくれる、壮大・壮絶ながらも繊細な物語でした。面白かったです!

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和田島イサキ

鏡の森

きっといつまでも続く、お伽話のその後

 お伽話の舞台となった深い森、その奥にある館を訪れる少年と、そして館の主人である博士の物語。  ファンタジー、あるいは伝奇のような(言い過ぎかも)風合いの物語です。全体的にダークな雰囲気が漂っているものの、でもダークファンタジーというのは少し違うような感覚。童話やお伽話をモチーフにするだけでなく、その裏に隠された現実やその残酷性を、ファンタジーという形で描き出したような作品です。たぶん。少なくとも自分はそのように読みました。  構成というかアプローチというか、物語のイントロである第一話『お伽噺』が興味深い。本当にここだけ短話完結のお伽話で、実質的には第二話から物語が始まっている。おそらく同一の森であることはすぐに察しがつくのですけれど、でもこのお伽話が物語にどのような形でつながっているのか、予測しながら読み進める感覚の独特さ。具体的にはリアリティラインの引き方というか、実際どこにどう線引きされているのか、それを手探りで見つけていくような読み心地が面白い。  というのも、本編がファンタジーであるのに対し、序章は完全にお伽話そのものなんです。例えば「魔女」やら「呪い」やらの存在が、でも果たして実際には「何」だったのか? いや創作的なファンタジーの世界と思えば、わりと字義通りのそれそのものでもおかしくはないのですけれど。でも『お伽話の魔女』と『ファンタジーの魔女』ではやっぱり違うわけで、ついついその辺りの繋がりや裏の意図を想像してしまう。特に絶妙だったのが第二話以降のファンタジー度合いというか、出てくるのは怪しげな館と博士であって、全然魔女とか呪いとかは出てこない——どころか、着せられた濡れ衣という形(いわゆる魔女狩り)という形で出てくるんです。  この感じ、材料だけは与えながらも確定させない、煙に巻かれるような感覚がとても好きです。本当なら可能な限り早く明示すべき『物語世界のルール』を、でもあやふやにしておくことでそれ自体を面白みに変えてしまう。言うなればある種のミスリードのようなもので、またそのために作中世界に伝わるお伽話を引いてきたことも絶妙でした。単純にイントロとしての役目を果たしながら、でも必然的に基準がふたつになるため、自然とそこに考えが向いてしまう。  以下はネタバレを含みます。  お話の筋というか、描かれる物語も素敵でした。特に結末で明かされるあれやこれや。本当にお伽話の世界というか、ある種の暗さのようなものも含めて、綺麗だけれど寂しさのある終幕。いつまでも森の奥で続く彼らの生活は、でもこの先もきっと今回のように、誰かのハッピーエンドの手助けをしていくのだろうと思わせる余韻。まさにキャッチコピー通り、終わらない世界に幸福を寄り添わせてみせた、優しくも耽美な物語でした。

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和田島イサキ

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