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ジャンル:ファンタジー

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けだしあやかし

死という重い主題に臆することなく挑んだ、王道のビルドゥングスロマン

 幼い妖狐が人間の子供に化け、幼児を亡くした老婆と共に生活するお話。  和風ファンタジーです。童話や昔話にも似たわかりやすくもしっかりとしたストーリーを、児童文学あるいはライトノベル/ライト文芸のような個性的なキャラクターの魅力で彩り、その上で主題の部分をきっちり掘り下げてみせる、優しいライトファンタジーのお手本のような物語でした。  本当に児童文学やお伽話を思わせるというか、このものすごく素直で真っ直ぐな筋立てが好きです。まだ幼い少年(年齢三桁だけど妖狐の発達だと事実上の子供)である主人公、鵲《いそしぎ》の視点から描かれた世界。彼の好奇心や興味関心の向かう様が、そのまま本文の雰囲気にどっぷり影響していて、だからこそ読み手の脳裏に浮かぶ光景や情動の、その瑞々しさが実に気持ちいい。  例えば彼の周囲にいる人々、妖狐の大人たちが魅力的なんですよね。頼もしく見えるし、また場面によっては「わかってくれない大人」としての役回りも果たしてみせて、つまりはっきり少年の成長物語をやっているという、その実感がとても楽しかったです。  あとこれは少しネタバレになってしまうのですけれど、結末というか物語の帰着点が最高でした。彼らの今後立ち向かうべき困難というものを考えたとすると、実は何も解決していないどころか問題が増えたともいえる決着。実は作中で主人公が実質的に立ち向かったもの、「人間と妖狐の寿命の違い」というのは結局どうあがいたところでどうすることもできない存在で、つまり必ず負け戦になるのですけれど、にもかかわらずこの晴れ晴れとした爽やかなハッピーエンド感はなに?  死という重い主題で始まり、その実際である葬儀の場面で終わってすらいるのに、でも確かに拓けているこの先の未来。まさにビルドゥングスロマン、形のない『成長』というものを文字の中にはっきり描き出してみせた、とても気持ちの良い物語でした。

5.0
0
和田島イサキ

けだしあやかし side-G

機械仕掛けの神としてのゴリラ

 幼い妖狐が人間の子供に化け、幼児を亡くした老婆と共に生活するお話。  和風ファンタジーです。童話や昔話にも似たわかりやすくもしっかりとしたストーリーを、児童文学あるいはライトノベル/ライト文芸のような個性的なキャラクターの魅力で彩り、その上で主題の部分をきっちり掘り下げてみせる、優しいライトファンタジーのお手本のような物語でした。  そう——そうなるはず、だったんだ……。  やけくそ感あふれる章題でもう笑いました。どうした六話目? いやどうしたのかははっきり書いてあるのですけど。そうか……どうかしてしまったんだな……可哀想に……(そっと布をかぶせる)。  いろいろと事情があってこの形にならざるを得なかったようで、実際「side-G」ではないバリアントも同時に発表されているので、このお話の本当の姿を見たい人はそちらを読むといいと思います(自分もこれから読んできます)。  第六話の、章題ですでに大変なことになっちゃってるのに、でも本文は普通に始まっているところが好きです。というか、震えます。「いつくるの、ねえゴリラどこからくるの」と怯えながら読み進めることの恐怖。ただの予告ではなく、予告そのものにより確約された破滅。どうやっても転げ落ちるしかない奈落の、その姿がいつまでも見えないこと。メタ構造の罠を利用した、儚くも壮絶なホラー作品でした。

5.0
0
和田島イサキ

きみをさがして

深く染み入るような結びの一撃

 至る所がゾンビで溢れる終末の世界、運悪くそのうちの一体となってしまった男性が、大切な妻の姿を求めて彷徨うお話。  ゾンビのお話です。ジャンルは現代ファンタジーとなっていますが(もちろん間違いではない)、書かれていることそのものはあくまで人間のドラマだと思います。  なんというか、効きました。読了した瞬間ズドンと一気に来るものがあって、でも具体的には一体なにがどう来たのか、うまく説明できる自信がないのが困ります。  この物語、意外な展開とか突飛なキャラクターとか、何か特別強烈な出来事があるわけではありません(たぶん)。いやゾンビだらけという状況は強烈といえばそうなのですけど、でも物語上のフックというか落差というか、そういう意味では本当になだらかな物語なんです。  お話の筋それ自体はこのレビュー冒頭、最初一行の要約の通り。しかもそれらはすべて読み始めてすぐに明かされる情報、その範囲を一歩も出ない形で収束して、にもかかわらず突然頭の上に落ちてくるこの巨大な質量の塊。ものすごいものを喰らわされました。真っ直ぐで平坦な道を、でも一歩一歩しっかり歩き通して、そのうちにいつの間にか積み上げられていた物語の、そのあまりの凶悪さ。いやむしろどうして結びの一文まで気づけなかったと、だってこれなら最初から見えてたはずなのに、と、しばらく口を開けたまま放心したくらいです。  本当に、ものすごく丁寧に書かれた小説だと思います。一文の長さとその読点による切り分け方、というか読点と句点の使い分けにより生まれるリズム、なによりその読みやすさがとても好きです。どことなく文学作品のそれを感じさせる文体。感覚や感情に肉薄せず、見た光景や事実の方にばかり寄せられるカメラ。でも食欲に関するところだけは別、という、この迂遠というか見えないところで情動の種が勝手に貯金されていく感覚!  たまりません。とても完成度の高い作品でした。やっぱり読後、最後の句点を読み終えた瞬間が最高に好きです。

5.0
0
和田島イサキ

狩人になるための心得

余計な雑味や寄り道のない王道そのもののジュブナイル

 祖父のような偉大な狩人を目指す少年と、彼のもとに現れた絶滅したはずの大烏が、共に戦い相棒となるまでの物語。  ハイファンタジー、それもどこか児童文学のような趣の、爽やかで真っ直ぐなジュブナイルです。少年の冒険譚、巨大な怪物から村を救う小さな英雄譚であり、また少年ふたりの友情物語でもあったりして(大烏の方も幼体なので)、いろいろたまらん要素がてんこ盛りでした。  世界設定、というか『獣』の設定が好きです。要はモンスターなのですが、でもいわゆる『魔物』としてのそれではなく、文字通りの獣すなわち「巨大な野生生物」といった趣の存在。幻想生物ではなく架空の動物としてのドラゴンやベヘモトと、そんな恐ろしい奴らの隣での生活を余儀なくされる人間という種。少年の夢である『狩人』とは、別に悪しきものを成敗する勇者ではなく、ただ人間が人間として生活していくために必要な職能のひとつである、というのがはっきり伝わってきます。  またこれらの設定面での土台固めがあればこそ可能な芸当だと思うのですが、登場人物の役回りの割り切り方、すなわち多くの大人たちがはっきりモブ役に徹しているところが最高でした。帰るべき家であったり、夢を理解してくれない口うるさい存在であったり、しかし戦力としては事実上の戦力外であったり。徹底して『主人公の物語』として見た側面のみが描き出されているところ、そしてそれ以外の面はただ書かれていないだけで決して存在しないわけではないところが、このお話を雑味のないものに、つまり王道らしくしているように感じます。  あとはもう言わずもがな、こういうお話はいいものです。目に見えず、また簡単に言葉にも言い表せない関係性、相棒としての信頼のようなものが築き上げられていく過程の見える、実に真っ直ぐで心地の良い物語でした。

5.0
0
和田島イサキ

喰らう箱と死なない少女

絵本よりもなお絵本!

 洞窟の中にただずっといるだけのミミックと、そこに現れた不死の少女のおはなし。  絵本です。いや絵はどこにもないのですけど。いざ読んでみるとまったく完璧な絵本そのもので、でも単純に絵本から絵をなくして文章だけ抜き出したというものではなく(たぶんそれだとまず絵本とは感じない)、本来絵の担っている部分まで全部文章がやってくれているという、読解可能理解不能の代物が目の前にありました。えっどうやって成り立ってるのこれ……? オーパーツ……?  なんだろうこれ。この、どう……何?(混乱している)  正直、ただ広大な宇宙に思いを馳せるばかりで何も書けることがないのですけど、とりあえず文章がとんでもないことになってます。まるで歌っているかのような本文のリズム、加えてその文体というか語り口の、ところどころに差し挟まれる変拍子のようなゆらぎ。わかりやすいところだとです・ます調とだ・である調の使い分け等、かなり大胆な動きで読み手の脳を揺さぶってきて、つまり音節的な美しさを生み出す以上に、さらにもう一歩踏み込んだところで(脳で音から文に処理している段階で)リズムを作ってくる、なんかもう呪術みたいなとろみと甘みのある文章でした。たぶんいっぱい摂取すると危ないやつ。  物語も最高でした。最高なんですけど実質もう文章に丸ごと取り込まれて半分くらい同化してるように見えるので、殊更お話の筋だけを切り出してどうこうという感覚にはなれず再び宇宙に思いを馳せています。まさに絵本といった趣のストーリー、お伽話の世界のようでいて、でもその実単純な子供向けとは明らかに違う、濃密な何かを投げつけてくる作品でした。  面白かったです。いろいろすごいことになってるのでぜひ読んでみてください。

5.0
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和田島イサキ

滞空日和

『翼』というモチーフがこんな使われ方してる時点で強い

 背に翼を持つ『有翼者』という人々の存在する世界のお話。  ジャンルには現代ファンタジーとあり、実際その通りの世界設定なのですが、個人的にはSF的な口当たりというか、現実に放り込まれたifみたいな感覚で読みました。  約3,000文字というコンパクトな分量で、文章や展開もさらりと読みやすくまとまっているわりに、主題の掘り下げがゴリゴリ底まで到達しているというか、がっつり食べ応えのある物語でした。  短いのでここであれこれ言及するのもなんなのですが(だって本文読んだ方が早い)、ある種のアウトサイダーあるいはストレンジャーのお話です。以下かなりネタバレ気味の感想になります。  市民の中の『有翼人』という括り、そしてその有翼人のひとりである主人公。彼が社会の中のいち個人としてどのように生きるか、その姿勢はでも有翼人の中のひとりとしての彼のそれとは決してそのまま同一に結び付けられるものではなくて、つまりそれぞれ『社会から見た個』と『集団から見た個』の、そのアンビバレンツな重ね合わせの存在としての彼。そこに生じる複雑な感情が、胸中で擦り切れてひりつくような感覚。  驚きました。文字を通じて伝わってくる淡い痛み自体もなのですけれど、なによりそれが『翼』というモチーフに仮託されて著されていることに。きっと現実にも同じく存在するであろう種類の葛藤や痛みを、そのまま架空の存在に仮託することで浮き彫りにして、しかもそれがファンタジーにはおなじみの翼、広い空を自由に飛び回るための空想の象徴という、こんなのたぶん初めて見ました。  そのうえで、一番惹きつけられたところはやっぱり、この物語の帰着点です。主人公が最後に見つけ出す答え。あるいは答えと呼べるほどのものではなく、もちろん何かが解決したというわけでもない中、それでも自分の中で何かに区切りをつけて上を向く、この小さくも確かなハッピーエンドがもう本当にたまらない作品でした。

5.0
0
和田島イサキ

全人類俺化計画

やだ、何これ……普通にいい話……?(トゥンク)

 普通の大学生に擬態して生きる大きな赤ちゃんが、油断から自分の正体をセルフ開示してしまい、世を儚み屋上から飛び降りるところから始まる奇跡の逆転劇。  笑いました。一見好き放題フリーダムに突っ走っているようで、その実ものすごく真っ当な物語してるところがなお面白いです。お手本みたいな起承転結に、テーマ性をしっかり下支えする物語の構造。結びの穏やかながらもの寂しい余韻の中に、でもくっきりと浮かび上がる主人公の格好よさ。彼こそまさしくこの世界の主人公だったと、この世界の誰ひとり知ることはなくとも、しかしただ読者だけが知っている——という、そんな古典かつ王道の英雄譚をどうして、なんでこんなお話でやってしまうんですか!?  びっくりしました。なにかしらこの気持ち……いや本当、まさか「おぎゃーーー!! ママーーー!!」とか言ってる人に対して、素で「やだ、あの人カッコイイ……」ってなる日が来るとは思いませんでしたよ……。  とてもまとまりがよく、なおかつ読みやすいお話でした。強烈な題材のわりに余計な力みやアクがなく、するする読めてどんどん物語の中に入っていけるので、すっかり安心して笑うことができる、という感覚。読み手を素直にさせる雰囲気作りが完璧でした。  個人的には、地味に本文以外の要素も好きです。タイトル、キャッチコピー、説明文、この辺がおしなべてわかりやすく面白くかつ目を惹きつけるインパクトもしっかりあって、総じて丁寧に仕上げられた作品だと感じます。とても楽しませてもらいました。面白かったです。

5.0
0
和田島イサキ

あといくつ食べれば

己の中のそれに気づけず永久に苦しみ続ける怪物

 ホテル最上階の高級レストランで、激しい口論をする若い男女のお話。  ぱっと見はただのカップルの痴話喧嘩、ちょっとした日常のワンシーン……かと思いきや、といった筋書きの作品です。およそ3,000文字というコンパクトな尺の中、シンプルながらも綺麗にまとまったストーリーラインが魅力的でした。  インパクトの強い会話の場面から入って、中盤で詳細な事情を明かしつつ不穏な空気を匂わせ、最後に急転直下のひねりを加えて落とす。流れが綺麗で、くっきりと浮き立つようなわかりやすさがあって、真っ直ぐ滑らかに読み通せたお話でした。  若干ネタバレ気味の感想になってしまうのですが、結び付近の展開の味わいというか、この辺りに含まれた豊富な想像の余地がとても好きです。落涙、という、これ以上ないくらいにはっきりとした情緒の証。はたして彼の抱えた欠陥は、本当に欠陥と呼べるほどのものなのか? なまじ本物の怪物であるがゆえに見ることのできない、自分自身の本当の姿。決して満たされることのないであろうその飢えに、どうしようもなく心が揺さぶられてしまいました。

5.0
0
和田島イサキ

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