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小説家になろうSF連載:31話完結

僕と彼女の、繰り返される夏

 この物語をまだ読んでいない方に伝えたいこと。  【 ヒロインに惚れます!!! 】  見た目や仕草が可愛いとか、萌えとかキャラ立ちとか、そういうものを超えています。これは惚れるしかないです。男だろうが女だろうが、この作品のヒロインに例外なく惚れると思います。現に私が惚れた!  衝動のあまり真っ先に伝えたいことを書いてしまいましたので、以降は順番に書かせて頂きます。  この物語は主人公・高畠智也が、恋人・藤堂栞との過去を夢に見ているところから始まります。  男子学生にとって恋人との時間は、学生生活に潤いを与える甘美なものでしょう。ですが、智也にとっては違いました。彼と彼女の関係は、『仮初』に過ぎなかったのです。  容姿端麗で人気者の栞と恋人という関係にありながら、智也は恋や愛という感情を持てずにいました。そうして日々が過ぎていく中で、栞は唐突に智也の前からいなくなってしまいます。智也との関係に嫌気が差したからとかではありません。  藤堂栞は、智也と「サヨウナラ」という言葉を交わした日の翌日、変わり果てた姿となって発見されたのです。  この事件が、物語の主軸となっています。  そして亡き恋人の夢を見た翌朝、智也の身には信じられない出来事が起きていました。  高校二年生だったはずが、なぜか中学生の頃にまで時間が巻き戻っていたのです。  なぜ時間が巻き戻ったのか? という部分が、『僕と彼女の、繰り返される夏』という作品では最大の謎であり、大きな意味を持っています。そして智也は、巻き戻った時間を有効に使うため、まだ生きている栞を「死なせない」ために奔走する。  恋愛ものでありながら、この作品の主人公には『乗り越えなければならない壁』と『敵』がいるのです。事件を巡る主人公の奮闘には、手に汗握るものがありました。  巻き戻った時間。  亡き彼女とそっくりな少女。  栞の手元にある【運命の人】という本。  これらの謎が複雑に絡み合っていく中、智也は無事に栞を救い出すことが出来るのか!?  ……というのが大まかな(本当に大まかな)ストーリーですが、ぶっちゃけこれだけではありません。見事などんでん返しがあるのです!(タグに書いてあるのでここはあえて言います)  いやあ……もう、ね。その感想が冒頭に繋がる訳ですよ。栞ちゃん、稀に見るヒロイン力の高さ。ベストオブヒロイン。最高です。  怒涛の展開に息つくのも忘れてしまう本作ですが、合間の癒しになってくれているのもまた栞ちゃんです。  作者様の卓越した文章力でもって綴られる彼女の細やかな仕草には、頬が緩みます。そして中学生らしい恋愛模様には読んでいるこちらが恥ずかしくなってくるものがあり、これもまた物語の合間の休憩となっています。……しかし!!  ただの「需要」としての描写では、決してないのです!!!  ここが、この作者さんの凄いところです。ただの「お楽しみ」になってしまいそうな些細なシーンさえ、伏線にする。とんでもない能力です。  いやもう本当、読んでない方は是非とも読んで下さい。時間が無駄になるなんて事は決してありません。  本屋でたまたま買った本がとんでもなく良作だったとか、そういう類の悦びを感じられます。作品として非常に完成された物語です。  純愛ものがお好きな方、タイムリープものがお好きな方、青春ものがお好きな方。  ぜひこの【僕と彼女の、繰り返される夏】という作品のページを捲ってみて下さい。  あなたの中に、これからの季節、読み返したくなる作品が一つ増えるはずです。

5.0
  • 作品更新日:2019/11/15
  • 投稿日:2021/12/17
小説家になろうコメディ連載:110話

記号たちは明日へ進む

〝ボツキャラクター〟と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか? ストーリーにおいて不要になり、外されてしまった登場人物……というのが、一般的だと思います。 本来であればそういったキャラクターは、パソコンのフォルダ内やノートの中で眠り続けているものですよね。 もしくは、書いた紙を丸めてポイ。創作をしている人にとっては、日常茶飯事です。 その当たり前が、もしも物語になったとしたら? ボツキャラクターに『その後』があったとしたら? そんな〝もしも〟を描いたお話が、この『記号たちは明日へ進む』という作品です。 メインの登場人物は、女子高生5人組。 ギャグ作品のボツキャラクター・ツッコミ役の春心とボケ役の朱音。 SF作品のボツキャラクター・しづく。 ミステリー作品のボツキャラクター・メーベル。 ファンタジー作品のボツキャラクター・ルシア。 可愛い女の子がワイワイする日常ものというだけで、一定数の方は満足できるんじゃないでしょうか? けれどもこの作品にしかない特別な魅力、それが〝スポットが当たる人物によって話自体のジャンルが変化する〟というものです。 第一話から春心と朱音のシュールな笑いに惹き付けられる本作ですが、ギャグ以外のジャンルもしっかりと濃く味わえるようになっていて、ほんわかした日常パートはもちろん、推理・戦闘シーンも迫力があります。 設定頼りではなく、小説作品として文章が練られている所もまた、作者様の技量の高さが窺える部分であり、お勧めできます。 キャラクターたちにも愛着が持てるような作品で、ボツキャラクターだからこその特別な力・ジャンルごとの『設定』を持っています。 笑える日常ものかと思いきや、徐々に明らかにされていく彼女たちの秘密。どこか熱い展開を感じ、手に汗握りました。 本来の役割から放り出された彼女たちの、『その後』の物語。 笑ってほのぼのして、じんわりと心に響くボツキャラクターたちの賑やかな日常を、あなたも覗いてみませんか?

5.0
  • 作品更新日:2023/7/5
  • 投稿日:2021/12/23
小説家になろう純文学連載:55話完結

咲夜。人の寿命が見える私と、来年までに死ぬ彼の話。

主人公・|加護咲夜《かごさくや》は、特殊な能力を持っている点を除けば、ごく普通の女の子です。 部活内での人間関係に悩んだり、恋をしたり。親友と楽しい時間を過ごしたりと、女子高生らしい等身大の生活を送っています。 しかし彼女の目には、人の「寿命」が見える。 この能力のせいで、咲夜は人の死を極端に恐れていました。 屋上に立つ男子生徒、その頭上に「一」という数字を見て、追い掛けてしまうほどに。 第一話の冒頭から、生死というものが濃密に描かれる本作。 序盤の咲夜は他人の寿命が見えるという能力を持て余し、そしてトラウマを抱いていました。彼女は「自分のせいで救えなかった」という思いから、勇気を出して見ず知らずの男子生徒・|今泉京《いまいずみきょう》の後を追いかけ、彼と対面を果たします。 残りの数字を見て嫌な想像を抱いていた咲夜ですが、後にそれが勘違いだったと分かり、その場で別れる二人。 これが高校の入学式の日に起きた出来事というと、ちょっとラブコメ感がありますよね。 新入生の女の子と、一学年上の男子生徒。いかにも青春の一ページといったシチュエーションです。 あとあと彼が所属する文芸部の一員になる咲夜。 三年生で部長の佐藤太郎、二年生の|生天目未来《なばためみき》、同じく二年の今泉京、咲夜の親友・|夢乃明日香《ゆめのあすか》。このメンバーと過ごす部活動の時間が、学園生活の大半として描かれてきます。 作中で新入部員として拙くも小説を書き始め、最後には全員でリレー小説を完成させる……まさに理想の青春ですよね。ちなみに最後の方では、どんな内容なのか読む事が出来ます。 全てを知った上で目を通すと、かなりグッとくるものがありますよ。 ただ上記は、あくまで部分的なものに過ぎません。 本作で描かれる彼女たちの青春は、咲夜の能力を通して展開していきます。 屋上の件から少し積極的になり、今までずっと重荷として背負ってきた力を他者のために使うようになる咲夜。その味方となってくれるのが、親友である明日香と、親しくなっていく中で能力の事を知った京です。 寿命が「一」になった人間を救おうと奔走する三人。 一人助ければもう一人と、彼女たちの元には次々に事件が舞い込みます。 トラブルを解決していく中で生まれる、人間関係のいざこざ。 重く感じがちな部分ですが、人物たちの発言・態度から感じる不穏さが気になり、読む手を止まらなくさせます。 寿命が見える能力の謎。 京の寿命が依然として「一」のままの理由。 そして、咲夜自身の抱えるトラウマ。 すべての線が繋がる時、この作品の虜になっている事でしょう。 主人公に限らず、色んな登場人物たちの〝人生〟が垣間見える本作、ぜひ読んでみて下さい。

5.0
  • 作品更新日:2021/1/26
  • 投稿日:2021/12/17
ノベルアップ+純文学連載:96話完結

半笑いの情熱

 現代ではSNSの普及により、相手の顔や名前を知らなくても交流出来るようになりました。  家族や友人と一緒の空間にいても、手元の画面を見るばかり。下を向きながら話すなんて日常茶飯事、そんなことも当たり前になってきました。  このお話では、主人公・池原悦弥とその友人・光蟲冬茂が、顔を突き合わせて楽しげに駄弁りながら飲み食いする場面が多く出てきます。ごく日常的な場面ですが、この『半笑いの情熱』という物語においては、とても重要な意味を持っています。  序盤からの『大学生編』では、囲碁部内での部員達との交流とその変化を描いています。  少し遠慮気味だったのが、顔を合わせるたびに段々と打ち解けていく。もちろん色んな人間がいる場ですから、和気あいあいとはいかず、衝突もあります。しかしそれを経て、お互いを知ることが出来る。  大学生という、大人と子供の境界線に立っている年齢の池原悦弥の人間的成長が見られるのが、この『大学生編』です。  対して以降の『小学生編』では、彼の過去と未熟さが描かれています。  その中身は、小学生として経験した出来事とは思えないほど心苦しいものです。「未熟だったから」では片付けられないような、彼が大学生となり部員たちと交流出来ていることが奇跡と思えるほどの、凄惨な過去。  今まで送っていた当たり前の日常が、ひとりの人間と相容れなかった故に大きく崩れていき、自分に牙を剥く。悦弥はそれに対し真っ向から立ち向かい、自分の考えを曲げずに押し通します。けれど数でも力でも負けている彼は体に傷を増やしていき、次第に心にも傷を負い始め、平気そうな顔でいなしていた彼の瞳からはいつしか涙が零れるようになります。  小学生編・秋での雨を願う場面は、無意識に心の中で流していた涙があったのではと思わせる、そんな切ない描写となっています。  そんな過去の苦い体験の合間、箸休め的に挟まれるのが、友人・光蟲と顔を突き合わせた飲み会シーン。  心を痛めながら読んでいた読者にとって一時の休息になってくれますが、悦弥にとってもまた救いと言えるでしょう。この『小学生編』は、悦弥が酒を飲みながら光蟲に語っている形式で綴られているからです。  人は、悲しい過去を隠したがります。それは二度と思い返したくないからです。  悦弥の小学校時代の経験もまた、同じでしょう。  けれど彼は、酒を交わしながら光蟲に語ります。聞き手である光蟲は、それに対し過剰に同情するでも涙するでもなく、彼らしい答えでもって返します。彼らのやり取りは軽妙で、普段のやり取りと大して変わりません。その反応がまた悦弥にとって心地いいのだろうと思わされます。  頑なに人に頼らなかった過去|(小学校時代)。  そして酒を飲みながら自身の過去を語る現在。  向き合いながらも人と人は、反発し合ったり意気投合したり、悦弥と光蟲のように半笑いを浮かべながら、互いの存在を心地よく思ったりします。  この物語を読んだ方にも、少なからず光蟲的な存在がいるでしょう。  読み終えた後にはきっと、向かい合って談笑しながら、「美味しいね」と笑い合いたくなることと思います。

5.0
  • 作品更新日:2020/3/16
  • 投稿日:2021/12/17