うたへうたえ
年齢制限はありませんが、創作百合を扱っておられます。 舞台は現代で、女学生たちが主人公です。現代ならではの「あるある」なシチュエーションにほっこりと温まったり飯テロされたり、描かれる情景そのものはとても穏やかで温かいのに、スパイスを加えるかの如く恋愛感情が絡まってきます。結果として、とても甘酸っぱい読後感。 同作者さんによる『喫茶店フォレスタ』とも共通しているのですが、登場人物たちが優しく、明るく、健気で、まさに光の創作。バンドと短歌って、一見音楽系(という名の体育会系)と文化系で、所属しているメンバーのイメージに差があるような印象だったのですが、それはステレオタイプなものの見方であり、両者は共に韻を踏んだ言葉でリズムに乗りながら想いを伝える芸術であるという共通点があります。その事実にハッとする頃には、きっとこの物語が深く刺さっていることでしょう。 作中の短歌は情景や心情をとても生々しく伝えてきます。一言で言うと、エモいです。 現代創作百合が好きで、人の優しさに触れたい方には是非ともオススメしたい作品です。
- 作品更新日:2020/3/22
- 投稿日:2021/12/18
喫茶店フォレスタ
いつのことだったか、うらひとさんの創作について、雨上がりの虹のようだと評したことがあります。そこに綺麗な虹を見せてくれているのだけれど、その足元には実は雨上がりの濡れた地面が広がっているのではないかと、私はそう感じます。足元を掬うとか、そういう意味ではなく、深い思いを持った上で、綺麗な作品を見せてくださっているように思うのです。 喫茶店フォレスタは、紹介文にも記されております通り、個性豊かで優しい家族を中心に展開する現代日常系短編集です。各メンバーに焦点の当てられた章があり、いくつかの短編で構成されています。章の表題になっている人物たちは焦点を当てられてはいますが、そこには他のメンバーとの関わり合いがあり、個性は独りでは成り立たないことを示しているかのようです。 この作品については、うらひとさんの作品の中でも特に強めの幻覚が得られることが知られており、ショップカードが実在するほか、行ってみた空想、二次創作などの話もたまに聞かれます。とか書いている私も、割と強い幻覚を楽しんでいるので、もうお察しくださいと言いますか。いやもう、本当に、常連客になりたいものです……。 他人と違いすぎることに関して、密かに悩んで個性を埋没させようとしている方がいるなら、是非ともこの『喫茶店フォレスタ』を読んでいただき、勇気づけられて欲しいと思います。
- 作品更新日:2023/6/24
- 投稿日:2021/12/18