ウーアの住む駅
父親の故郷の閉塞感を思い出しました...胸糞が悪くなるような、そんな田舎に蠢く形のない悪意みたいなものがあるけど、かえってそれが生々しい。怖くて嫌だけど、好きなんジャンルの作品です。 あまり多くを語ると、この作品の持つ雰囲気を壊してしまいそうなので、このレビューを読まれた方ならば一度読んでみてください。
- 作品更新日:2020/9/27
- 投稿日:2021/7/9
豆腐小僧の思い出
少年の日の思い出の中で語られる妖怪。それはどこか懐かしいものでした。 「岐阜県の妖怪が怖かったら、岐阜県も怖いところになってしまう。」 茶目っ気のある妖怪たちから感じる、悪戯小僧のような憎めない気風を感じることができました。
- 作品更新日:2020/7/15
- 投稿日:2021/7/10
カタナクション
この作品を「ありがちな異世界もの」と侮ることなかれ。もし、この作品をそのように言う人が有れば、それはこの作品を味わい尽くせていない人だと思う。それほどのに濃密で重厚な作品だった。 4人のマレビトの視点から語られる異世界と個々人の苦悩や、現実世界でのトラウマや精神的なゆらめきが、魔法のある世界で一気に発現する様子は宮部みゆきの『ブレイブストーリー』を思わせる。 しかし、主人公は幼い少年ではなく、苦境も経験し尽くした青年。他のマレビトも一人一人、年齢、性別、経験が異なり、それによって瞳に世界が違う形に映る。その描写がこの作品を、ありがちな異世界ものとは異なる、現実と地続きの人間たちの物語にしている。 手垢のついた表現だが、この『刀と魔法の世界』を読み、堪能できたことが嬉しいと思う。皆さんにも、ぜひ味わって欲しい。お勧めです。
- 作品更新日:2022/4/8
- 投稿日:2021/7/9
『MM9』番外編 藤澤さくらの憂鬱
MM9を読んだことのある人間、特撮作品が好きな人間にはたまらない作品です。MM9本編からドラマ版へ繋がるストーリーも良いですが、私はその細部を彩る特撮小ネタがたまらなかたったです!凱旋門の下から出てきた怪獣は何者なのか...バ○ゴンなのか、それともゴ○ザウルスか、はたまたマ○マか...その特撮ネタを記憶の汚染による情報錯綜という、災害現場とその報道で発生しやすいトラブルと絡めるのは流石だと思いました!
- 作品更新日:2016/6/15
- 投稿日:2021/7/10
ワラキアー眠れる龍の遺産ー
読ませていただきました。緻密な描写、風の匂いすら感じさせる表現、串刺し公と呼ばれた男の人生、どれも重厚で素晴らしかったです。手垢のついた表現となってしまいますが、「おもしろい作品」とはこういうことかと思わされました。
- 作品更新日:2020/8/1
- 投稿日:2021/7/10
ドラゴンが車と交尾していたので、調査することになった
第1話を読んでみての感想です。イギリス環境省のドラゴン担当の技官、ジェームスを中心にネットミーム的存在である「ドラゴンカー○ックス」を研究する物語! しかし、単なるコメディではなく、繊細な描写や細部へのこだわり、緻密な設定など、ドラゴンやファンタジーの愛が溢れる素晴らしい作品です! 赤いドラゴンと西洋ネギをシンボルとするウェールズ、その首都のカーディフ(ドクター・フーで有名な街)に現れたドラゴン。その存在は絶滅した生き物とされていたのにも関わらず、「車と交尾する」という滑稽な姿でSNSで拡散されるのは非常に現代的です。そして、その鱗のきらめきなど生き生きと描かれています。本当にお勧めです!
- 作品更新日:2020/9/18
- 投稿日:2021/7/9
浴槽の人魚姫
《人魚》だった《人間》が、一人絶望によって、水を得た魚とは真逆の、陸に上がった河童のように、力を失って《人間》へと落ちていく姿は読み手も絶望へと落とします。最後、水を奪われて喉が干からびたように、誰にも伝えることが出来なかった思いは、どこへ向かうのでしょうか——
- 作品更新日:2020/8/11
- 投稿日:2021/7/9
The Gazer 《 ゲイザー》
怪物や魔獣が住む世界で生きる人々。それらを狩る者に、それらに怯える者。その全てが重厚かつ美しく描かれていて、素晴らしいと思いました!月並みな言葉かも知れませんが重厚かつ読み応えのある、本格的ファンタジーだと思います!
- 作品更新日:2024/5/9
- 投稿日:2021/7/10
壷天窖穹
眠れない夜、ふとスマホに映った新作情報を見て読みはじめましたが、短いながらも共感させられる傑作でした。 外の世界を知らない雛、その世界は壺の端から端までという小さなものでした。そのような矮小な世界しか知らない雛を恥に思う人もいるかも知れません。しかし、私は雛の持つ外への恐怖、環境の変化することへの耐え難い不安感に強く共感してしまいました。 壺の外から差し込む光を、まるで天啓のように受け止めて外へ羽ばたくことを夢に見る雛も世の中にはいるのかも知れません。 ですが、その光が差し込む隙間が宇宙船の皹のように見え、そこから今までの世界が裂け、真っ暗闇の宇宙へと吸い込まれてしまうような恐怖を抱く雛もいるのです。 深夜2時ごろ、不安で眠れぬという更なる不安を抱きながら布団に横たわっていた私は、まさしく壺の外を怯える雛でした。 勢いに任せて書いたものなので、誤字脱字、理解しきれていないところがあったならば申し訳ございません。それでも自分と重ね合わせてしまわずにはいられない傑作でした。 ありがとうございます。
- 作品更新日:2021/6/30
- 投稿日:2021/7/9
死がふたりを別つから
息の詰まるような、そんな閉塞感のあるミッション・スクールを舞台にした、繊細で敏感な少女たちの物語。そこにあるのは、むき出しの神経を風が撫でるような、そんな思春期の痛々しい思い。青春を甘酸っぱいだとか、ほろ苦いというのは勝手だが、当事者にとっては出口のない迷路をさまようような、孤独との戦いの連続だ。どんなにたくさんの人や、教えに囲まれていても孤絶の中にいる少女たち――そんな痛々しくも瑞々しく、そして息苦しい、そんな先の読めない物語が展開されています。読み進めていくたびに新しい発見のある作品です。
- 作品更新日:2021/6/17
- 投稿日:2021/7/9